はじまり 1


どうしてこんなところに来たの?

地元の人によく聞かれる質問。
そんな小さな田舎町に7年前、日本食レストランを開いた。

「レストラン、やろうよ!」
夫に言われたときは、断固反対。
「家族そろってごはんが食べられなくなるのは いや。」

私の切り札を、彼はこともなげにこう返した。

「町の人みんなが家族、って思えばいいじゃん」。

・・・・・・。 

夫からまっすぐに見つめられて、にっこりこんなふうに言われたら、どんなふうに答えますか?
 
私は、一瞬戸惑った。ひるんだ。
彼のいつもの、呆れるほどのまっすぐさ。
そして彼が大きい絵を見れば見るほどに 私は目の前のものを見る。

「いいよ、
 やればいいよ、
 でも、私はやらないよ、私は子供といる」

 結婚して14年。
3人の子供たちとの暮らしは平和で、私はずっと専業主婦。
お金がなくても自由と平和があるさ、
そんなヒッピー系の人たちも暮らす、ぶどう畑に囲まれた町で 私たち家族もそんなだった。

 お金よりも時間、

 先のことよりも今、

 樫の木に囲まれた丘の上で、落ち葉を踏む音を聞きながら散歩。

 それがいちばんで、
 5人家族にしては びっくりするくらい小さい家も、友人からもらった70年代の車も、スリフトストアーで調達してくる服も、ぜんぜん気にならなかった。
 
 自分の暮らしが大好きだった。
[PR]
by S_Nalco | 2010-08-29 16:05 | はじまり
<< 予感 2 生活保護 >>