予感 2


 お客は 夫のいとこの友人で 私たちとは一面識もなかった。
ただ、自分の転職の転機にアメリカに来てみたかったのだという。私たちはすぐにうちとけて、
彼がいっしょに グランドキャニオンやヨセミテ公園、といったカリフォルニア近辺の観光をしよう、という提案にのった。

 私たちに日々の生活以外の余分な蓄えはなかったけれど、バンにキッチン用品を積み、寝袋を積み、出かけた。

 食事はキャンプ場で作り、夜は車の中で眠った。 
子供たちは大喜びで、どんな状況でも、みんな旅を楽しんでいた。

 たとえそれが気温が零下の車の中でも・・・。
グランドキャニオンでのその一夜は、私にあるインスピレーションを与えてくれた。

 夜になると凍えるくらい寒くて、入れた熱いお茶もしばらくすると氷の膜がはった。
私は子供たちにできるだけの寝袋をかけてやり眠りについたが 寒くて何度も目がさめた。やっと朝がきて、見ると、車の中の缶ジュースの残りが完全に凍っていた。

 「私ら、冷凍庫の中で眠ったんだね!」
鼻の頭を赤くして、白い息を吐きながら興奮している子供たち。夕べは暖かく眠れたと言う笑顔に慰められたけれど、心の中では何か腑に落ちないものがあった。

 寒い夜に宿をとって泊まることを選択できない、という不自由さを味わっていた。
そして、宇宙は 必要ならば、私たちを最低限生かしてはくれ、眠る場所を与えてはくれても、それが車の中であろうと、洒落たホテルであろうと、知ったことではないんだ、とふと思った。

 もし、どこで、どんなふうに眠りたい、と選択の幅を広げたいなら、その可能性を広げていくのは、私の仕事なんだ、と。
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by S_Nalco | 2010-08-29 16:06 | 予感
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