ゆっくり進む

はじまり 4


それでも歩みはゆっくりだった。

レストランになる店舗を借りて、およそ2年後、店はできた。

2年のあいだ、夫が大工の仕事をしていた時に知り合った友人達に手伝ってもらいながら、以前はオフィスだったという殺風景な、何もない部屋を オープンキッチンで7席のカウンター席と、パティオも合わせて、11のテーブルのある店に仕上げた。
カウンターに使う木は、以前住んでいた山の、火事で倒れた樫の木を運んで来た。

「いったいいつオープンするの?」

道行く人が いつまで経っても工事中の室内に入って来ては聞く。

あるとき資金がなくなって、それ以上進めなくなったときがあった。
するとそれをどこからか聞いてきた、息子の友達の両親がお金を貸してくれると言ってくれた。
彼らとはそれほど近かったわけではない。けれど、息子の小学校の行事や、資金集めのイベントで手伝ううち、私たちを信頼してくれるようになったらしい。

小さな歩みを進めながら、2年後にやっとオープンしたときには
「諦めないで続けていれば、いつか、できるものなんだね」
という褒め言葉とも取れない賛辞を沢山の人に頂いた。

この道のりを時々手伝ってくれていた友人の一人も 私たちのオープンで元気を得て彼のビジネスを立ち上げた。

ゆっくり進むのも悪くない。

お金、労力、情報、支援の気持ち、人々がそれら自分にできる様々なものを運んできてくれて、 何かを作り上げたあとには、友情や信頼がすでに根を下していた。
ゆっくり進むことで見えた優しい風景がたくさんあった。
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その後、店が順調に進んでいったのも、この地域の中ですでに、人々とのそんな関係が築かれていたことも大きい。

私たちもいつか、夢を追いかける人の 支援のひとつの手になろう、これまでしてもらった以上のことを返していけるよう、成長しよう、そんな堅い決心も、ゆっくり進んできたからこそ、だったかもしれない。
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by S_Nalco | 2010-08-06 17:46 | はじまり
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