くふうする生活

夕べは私ひとりで、家には誰もいない日だった。
近所のピザ屋で夕食を買って、給料計算を済ませてしまおう。
仕事帰りに寄ったピザ屋で、野菜たっぷりのスライスピザを紙皿にのせてもらって車に乗ろうとした時だった。

ホームレスらしき男性が近づいて来て、
「50セント、持ってないかな」と聞くのである。

ショッピングセンターで、そういう人が来れば、「じゃこの荷物、運んでよ」とか言って小さな仕事を頼んだり、何もピンとこなければ、今、小さいの持ってないからね、と断る。

けれど、今日の人は今まで聞いたことのないアプローチをしてきた。

はっきりと「50セント」という金額を言ってきた人は これまでにいなかった。


最初、あれ、50セントだけ何かを買うのに足りないのかな、と思って、
OKとすぐにバッグに手がいった。
お金を受け取ると彼は「ありがとう!」と大きな声で言って、それをズボンのポケットに入れた。
するとジャラリ!とコインの沢山入っている音がした。
見ると彼の半ズボンはたっぷりしていて、ポケットも見た感じ、容量たっぷり!

そしてそのコインの音を聞いて、私は彼が何をしているのかがわかった。

お金をただ無心するのではなく、はっきりとした金額を提示すること、
しかもその金額が、誰でも簡単に出してしまえる金額であること。
それによって、言い寄られた人は何も考えることなく、財布を開いてしまうものだという人の心理。それを利用して、より沢山の人からお金をもらうことに成功しているホームレス。

重たいポケットを提げて、足取り軽く、次のお客へ向かっていった。

私は何か、小さなことでもちょっとしたアイデアを使って、人と違うことをやっている人を見るとすごく嬉しくなってしまう。


松下幸之助さんの本の中にこんな一文がある。

きのうと同じことをきょうは繰り返すまい。どんな小さなことでもいい。どんなわずかなことでもいい。きのうと同じことをきょうは繰り返すまい。多くの人々の、このわずかなくふうの累積が、大きな繁栄を生み出すのである。
(PHP 研究所 道をひらく・くふうする生活より)

店をはじめた頃の1、2年はくふうする余地が山ほどあった。何かが変わるごとに、仕事がしやすくなり、お客様の笑顔が増えた。
今はそのときほど、変えることはないけれど、その代わり考え方を変えてみることが多い。人への接し方、話し方、質問の仕方。自分の行動パターン、思考パターン、それをほんの少し変えてみることで違う日常が開けてくる。

「50セントのジョー」カリスマホームレス(勝手に名前をつけてみた)が、くふうを繰り返し、大富豪になって、成り上がりを本にしたら、ぜひ読みたい。そうなれば、夕べの私の50セントは彼への投資、ということになるんだな、そんな成功物語を想像して、ひとりわくわくしているところである。
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by S_Nalco | 2010-10-03 17:26 |
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