はじめの一歩を踏み出そう

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はじめの一歩を踏み出そう
世界文化社・マイケル・E・ガーバー著

お店を始めたばかりの頃、まだ商売というものがまったく手探りのときに出会った本。

スモール・ビジネスの成長のしかたを、
「あなたのパイはこんなに美味しいのに、お店を出さないなんてもったいないわ」
と幾人もの友人に勧められて、店を始めたサラとの会話で進めていく。
ただパイを焼くのが上手なだけの女性が商売を始めて、大変な思いをしているところへ、この著者がコンサルタントとして助言していく設定なので、具体的で、とてもわかりやすかった。

オーナーがいなくては店が成り立たない自営業から、オーナーが現場にいなくても収益の上がる仕組みを作るためのステップの全体像が一読したあとには見渡せる。当時の私にとっては自分たちが進んでいく大きな地図をもらったようだった。

特に「起業家、マネージャー、職人」という3つの人格が事業には必要だということ、一流企業のように経営する、自分の売る商品を通して、顧客に何を提供したいのかを明確にする、など店を始めたばかりの頃だったからこそ、ピンとくる要点がたくさんあった。

今、赤線のいっぱい引いてあるこの本を ぱらぱらと読み返しても、興味深い。また、上からの目線でなく、サラに寄りそうカウンセラーとしての著者の在り方が心地いい。

著者はまた、自分の会社の将来像を考えるうえで、自分の人生の目的をはっきりさせることも勧めている。
アメリカ人はとくに日本人と比べて、仕事一辺倒を良しとしないと思う。自分の時間、家庭、友人を大切にし、なおかつ、日々のエクササイズ、年に何回かのバケーションをきっちり取ることでバランスを取り、友情を育て、健康を維持するように努力していると思う。私たちは、店を始めた頃は朝から晩まで仕事にどっぷりだったので、自分のライフを生きなさい、とたびたび友人から忠告を受けたものだった。

私はどんな人生をすごしたいと思っているのか。
私は毎日どんな生活を送りたいのか。
人生の中で何を大切にしたいのか。
自分以外の人たち・・・家族、友人、仕事仲間、顧客、従業員、地域社会・・・とどのように関わっていきたいのか。
二年後、十年後、二十年後、そして人生が終わりに近づいたときには何をしていたいのか。


この項目は、自分にとって、仕事が自分の人生の中でどういう位置にあるのかを考えるのにも参考になる。

町のはずれにある、カレー屋のご主人。ネパール人の彼の作るカレーはとても美味しいので、うちのテイクアウトの店にも卸してもらっている。けれど、彼のレストランはあまり繁盛しているようではなかった。

ダウンタウンにある私たちの店の近くにレストラン店舗が空くという噂を聞いて、彼に引越せば?と聞くと思いがけない答えが返ってきた。

「僕は沢山の人を雇うのは性にあわないってことが今までやってみてわかったし、自分が食べていけるほどの収入があればいいんだよ、だからそんなに繁盛しないほうがいいんだ」と答えたのだ。私は店を始めれば、誰だって繁盛店にしたいものだ、と信じていたので、彼の答えには大変驚いた。けれど、彼の性格を考えれば、そのほうが彼は幸せなのかもしれない。

自分が人生に何を望むのか、何を大切にしたいのか、自分を知ることで、人はするべきことを知り、すべきことでないことを知り、それぞれの幸せを手にいれていくんだと彼を見て思った。

私はこの本を、いつか自分の店をやりたい、というスタッフに買ってプレゼントした。夫は彼に自分の仕事の殆どを引き渡して、今はラウンジ作りのために、大好きな大工仕事を始めている。新しいスタート地点に立つときは 何度も石橋を叩きたくなるものだけど、とにかく今、できることから 
再び、
「はじめの一歩を踏み出そう」、と思う。
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by S_Nalco | 2010-10-12 16:14 |
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