素直な心になるために

素直な心になるために
PHP研究所 松下幸之助・著

この本のページをめくると初めにまず、松下幸之助さんの朗らかな笑顔の写真が目に入る。
メガネをかけた著者の、大きな耳。
ああ、耳とはまさに、「聞く」ためにあるものなのだ、とその横に大きく広がった耳を目にして思う。

「素直な心」というものについて、一冊の本を費やしている。
素直な心の内容十カ条、
素直な心の効用十カ条、
素直な心のない場合の弊害十カ条、
素直な心を養うための実践十カ条、
から成り立っていて、誰もが持っている、
「素直な心」に気づき、育てていくことに対する著者の情熱が静かに伝わってくる。

「素直な心の内容十カ条」のひとつに
「耳をかたむける」というのがある。

「素直な心というものは、誰に対しても、何事に対しても、謙虚に耳を傾ける心である。」

以前、20歳を過ぎた若い男性がキッチンで働きはじめたことがあった。
彼はまったくレストランでの経験がなかったので、皿洗いから始めたけれど、それが一向にスピードが上がらない。
1ヶ月過ぎても向上しないので、もう一度トレーニングしようと彼に話した。
けれど彼は驚いたことに、トレーニングは必要ないと言う。
自分は自分のやり方で間違いない、と言って、自分の仕事が遅いことへのあらゆる言い訳を始めたのだった。

私はまったく驚いた。
こんな人は始めてだったけれど、私は若いこの男性をとても気の毒に思った。
もしも、万事がこの調子では、彼は自分から学ぶ機会を逃していることになる。
彼はこの先どうなるのだろう?
彼のこの態度が、彼のこの仕事に対する興味のなさから来ているのだとしたら、彼はさっさと辞めて、自分が学びたい、と思える場所に行くことを私は勧める。

自分のことを振り返ってみれば、学校を卒業してすぐに入った銀行での銀行員としての仕事が好きになれなかった。
当時の私が先輩や上司の話に耳を傾けていたかどうか、大いに疑問だし、そんな私の存在は周りの人にも迷惑をかけていたと思う。
そのままそこで働き続けていれば、自分が壊れてしまうと気づき、2年後に辞めた。

その後、私は地元のタウン情報誌の編集をすることになり、大好きな活字の仕事に就くことができた。
学びたい、という貪欲な気持ちが人の話に耳を傾けさせることになった。
私の生活は変わった。

レストランを始めてから、6年後の日記に私はその頃の反省を書いている。
「自分が謝れなくなっている」と。
自分のミスをスタッフの前でなかったことのように振舞ったことが、2日続いて、私は自分がどんなに傲慢になっているかに気づいた。

「素直な心がない場合いの弊害十カ条」
には、素直な心がない場合には、自分の考えにとらわれ、視野もせまくなって、往々にして独善の姿に陥りかねない、とある。

こんなふうにこの本を、自分の行動を省みるときに使うと、時々ドキッとすることが書いてあってわかりやすい(笑)。

「素直な心を養うための実践十カ条」では、強くそれを願う、自己観照、のほか、素直な心であることを、忘れないための工夫、というのがあって、「素直な心になるためのお守り」というものを工夫して作ってみることなどを薦めている。

「これは自分が素直な心で人に接し、物事に対処していけるようにというお守りだ。
これをさわればきっと自分は素直な心で対処できるだろう。
また素直な心で対処しなければならないのだ」
というように、心の中で確認してみるわけです。
そうすることによって、やはり素直な心というものを忘れずに日々を過ごしていくことができやすくなっていくのではないのでしょうか。
(「素直な心を養うための実践十カ条」より)

著者がここまで親切に書いてくれていることに、私は感動する。

また、素直な心というのは、奥が深い。

素直な心とは私心なくくもりのない心というか、ひとつのことにとらわれずに、物事をあるがままに見ようとする心といえるでしょう。
そういう心からは、物事の真相をつかむ力も生まれてくるのではないかと思うのです。
だから素直な心というものは真理をつかむ働きのある心だと思います。
物事の真実を見極めてそれに適応していく心だと思うのです。 
(「お互いが素直な心になれば」より)

ベッドサイドにいつも置いておきたい本の一冊です。
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by S_Nalco | 2010-11-26 17:55 |
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