報酬とは

先週来られたお客様で、
食事が出てくるのが遅く、
こちらのサービスに不満のあったグループがあった。

5人家族のグループで、
16歳の息子さんの誕生日だったそうだ。

ありがたいことにその家族は、
彼らの不満を 
テーブルに設置してあるコメントカードに書いて、
電話番号も置いてくれていた。

見てみると、
30分離れた町からわざわざ来てくれている。

夜も遅かったので、
翌日にマネージャーが電話して不手際を謝った。
お食事券を送りたいので住所を知らせて欲しいことを告げると、
相手は、
こちらの不手際に関しては
仕方のないことで、理解できる範囲であること、
そして、こちらが電話をしてきたというだけで、
誠意がわかって嬉しい、
ありがとう、とお礼を言ってくれたという。

このことを聞いて私は、
涙が出るくらい有難かった。
このように店というのは
お客様から教育して頂けるのだ、ということを思った。

どれだけの人が店のコメントカードに、
匿名ではない不満のコメントを書き、
電話番号まで残してくれるだろう?

たいていの人は、
気に入らなければもう2度と来なければいいのだ、
と、そのお店のことはそれ以上は考えないと思う。

また、電話番号まで書いたコメントカードを残すことで
店から見返りを期待している、
と思われるのではないかと、
杞憂するお客様もいる。

マネージャーは何とか先の相手の住所を 
電話で聞き出してくれたので、
私は彼らが今回食事に使った金額に上乗せしたものを 
お食事券で送るようにした。

報酬というのは 
お客様が喜んでくれたことでこちらが頂けるものなので、
喜んでもらえなかった場合はお金は頂けない。

初めの頃はそこまで思いきる勇気がこちらになかったし、
そこまでしなければならないというアイデアも、
私のほうで育ってはいなかった。

けれどある夜に、
一人のお客様がうどん出しについて不満を漏らされて、
その対応に困ったウエイトレスが私に聞いてきた。
もう何年も前になるので、
どういう理由だったのかは忘れたけれど、
こちらに不備はなかったことは覚えている。
それでも、私が
「じゃ、お勘定はいいわよ」と笑顔で対応したことで、
店の雰囲気がぱっと変わって、
スタッフの士気が上がったのがわかった。

私のその判断で、
「喜んでくれたお客様から、お金を頂く」
という店の在り方が
働く人の誇りにもなったのだと思う。

随分前に日本で
小さなイタリアンレストランに友人と行ったことがあった。
けれど50分待っても食事はいっこうに出てこないまま、
私たちは店を出なければならない時間になった。
キャンセルしてください、と店の人に言うと、
もう作り始めているので、
キャンセルしても代金は頂くことになります、
と言われた。
仕方なく、私たちは安くはない食事代の全額を払って、
お腹をすかせて店を出たことを覚えている。
私は若かったので、
それが店としての適切な対応だったのかどうかは
その時の私には判断できなかった。

でも、店を持った今なら、
それがとんでもない応対だったことがわかる。
「店の都合」
だけを優先してしまっていることはないか、
店を見回して、日々、それを考え続けていくことが、
私の仕事のひとつでもある。
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by S_Nalco | 2010-11-29 15:44 | ホスピタリティ
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