バレンタインズデー

バレンタインズデーは一年で一番忙しい日。

でも、誰もがすでに愛一杯で、
誰かさんと手をつないで来店してくれるこの日、
店内は本当にあたたかいLOVEのエネルギーで満ちているのを
毎年感じることのできる、素敵な日。

さて、数日前から予約で一杯になるにも関わらず、
当日も予約なしで立ち寄る人、
テイクアウトのオーダーでひっきりなしに鳴る電話、
そんな時に一組の老夫婦がやって来た。

彼らのシートはカウンター席、と予約シートには書いてある。

それでカウンター席に通そうとすると、
二人はきっぱりと、
「カウンターには予約してない」、と。

何かの間違い。

白髪の二人のうち奥様のほうは杖をついていて、
入口の椅子にすでに腰かけて、
頑としてテーブル席を待つ体制。

けれどその時点で、空いている席はただひとつ、
しかも30分したら来ることになっている4人のお客様の予約席だった。

若い人へなら、事情を説明して
カウンターに座ってもらうしか
他にチョイスはないのだということを説明するけれど、
この老夫婦に、他に何と言えるだろう?

「テーブル席を用意しましたよ、こちらへどうぞ」。

後先考えずに流れに乗ってしまうしかないことがある。
その時の状況にあわせて「最善を尽くす」。

あとから来る4人のお客様のことを考える暇もないくらい忙しくて、
ついにそのときがやってきた。

中年のダブルデートのカップル。

ふたりきりでなかったのが良かった。
4人は着いたときからすでに彼らのお喋りに夢中で、ノリが良かった。
私が こちらの手違いで席がまだ空いてないのだと告げると、

「いいわよ、また明日来るから、気にしないで。」とあっさり。

たいていのお客様にこんなことを言えば
激怒されるのがあたりまえなのに。

聞けば、はじめからうちか、
もうひとつ、町にあるスシ屋か決めかねていたのだそう。
そのレストランは広いので予約なしでも入れるし遅くまで空いている。
「そこに行くわよ!」と笑顔で出て行かれた。

こんなお客様に当たるとはほんとうにラッキーなこと。

けれど、いつも色んな形で私達はラッキーなのだ。

その時の状況で
「最善を尽くす」ことで、
宇宙は欠けた何かを取り戻そうと動いてくれるようだと気づいたのは、
いつ頃だったのだろう?

今日のような
「他の店に行くからいいわよ」と、
バレンタインズデーのようなスペシャルな日に、
そんなことを言ってくれるお客様は本当に稀だけど、
キャンセルが入ったり、
遅くなるからと連絡があったり、
前のお客様が予定より早く帰ったりして
終わってみれば、
たいていツジツマがあうようになっている。
(他にも急きょ、余分のテーブルを押し込んだり、
お隣のテイクアウトの店に席を作ったこともある)

以前は今日のような日があるたびに 私はパニックに陥り、
そしていつもこんなふうに助け舟が出されたり
アイデアが湧いてきたりして、事なきを得る、
結局は 誰もがハッピーエンドになる体験を多くして、
今は心配する代わりに、
「大丈夫、うまくいく」と自分に言い聞かせる。

瞬間、瞬間で最善を尽くすこと。
同時に全体を眺めている視点をもつこと。

このふたつを同時に試されていることがわかったから。

だからと言って、あぐらをかいているのではない。
そんなことをしたら宇宙のサポートシステムから外されてしまう。
ただ、「心配する」というエネルギーは何も助けにはならない。

カウンター席が大嫌いな例の老夫婦は、
テーブルにコメントカードを残してくれた。

「11年前に日本でお好み焼きを食べて以来、大好きになりました。
このへんの日本食レストランでお好み焼きが食べられるのはここだけ。
ほんとうにありがとう。」

席がなくて帰ったもらった4人のお客様には、
翌日お詫びの電話を入れた。

次に来店するときのスペシャルサービスを約束して。
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by S_Nalco | 2011-02-22 07:13 | ホスピタリティ
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