行動のもとになるもの 1

お天道様に照らされて
多くの命が育まれるけれど、
商売においても、
それは明るい息吹を吹き込んでくれる。
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10月の後半から3月まで雨季と呼ばれる
雨の多いこの地域では、
年明けから雨が終わる頃までお客様の足も遠のいてしまう。
だから1月、2月は店ごと長い休暇を取るレストランも多い。

けれど、3月の終わり、
春を感じさせる風が吹き始めて、
その風と一緒にお客様も一緒に押し寄せてくるイメージが、
ある日やってきた。

その頃、ダイニングマネージャーが休暇を取っていたので、
私は毎晩彼の代わりに夜のシフトに入っていた。
それで私はすぐに満席になってしまう小さな店内、
(11テーブルとカウンター7席)の他に、
外が温かいので、店の外にもう一つ、4人がけのテーブルを置いた。

折角来店して頂いたのに、
空いた席がなかったり予約で埋まっていたりして、
お客様をお断りしなければならないことほど申し訳ないことはない。
だから、一人でもお断りしなくていいように、と思ってのことだった。

ディナーのオープンになると、町でイベントがあったのも重なって、
来店する人、テイクアウトのオーダーをする人で
店がすぐに一杯になった。

外の臨時に置いたテーブルも
入れ替わり立ち代りお客様に座って頂いた。
その光景に、はじめは笑顔だった私の気持ちが
だんだんクエスチョンマークになっていったのは、
あまりにも忙しくて、
自分がいつもは普通にできるレベルのサービスを
お客様にしてあげられていないことが 
オープンして、
ほんの1時間足らずの間に積み重なっていったからだった。

混雑した店内で、幾つものお手玉を操るように動きながら、
カウンターでスシを握っている夫に耳打ちした。

「テーブルひとつ増やしたの、間違っていなかったかな?」

「どうして?お客さん、喜んでるよ。」

もちろん不機嫌なお客さんの姿は見当たらない。

けれど、忙しい上に、テーブルを増やしたことで
サービスの流れはいつもよりゆっくりだった。
ゲストチケットが運ばれてくるのを待って、
ぼんやりしているお客様に、
私は自分の仕事で手一杯で 話しかけに行くこともできなかったし、
その日多かった子供連れのファミリーにも、
もっとして上げることができたのに、と気づけばきりがない。

私は恐るおそる、そっと自分の気持ちの流れを巻き戻ししてみた。
そこには、
その日、店に出勤して、予約状況を見、
風が温かくて、最近人足が増えてきたことを考慮した時、

「来店された時、
 席がないのでお断りしてお客様をがっかりさせないようにしたい。」
という気持ちより以前に、

「いつもよりヒマだったこれまでの挽回をしなければ」
というとっさの思いがあった。
私はそのことに実は気づいていたのに、
気づいていないふりをしていたのだった。

何かをやろうとしたとき、
一番最初の思いの出所(でどころ)こそが最も大切なことだと、
私はこれまでの経験で十分に思い知らされた。

「儲けたい」、
そう思ってやったことはちっともうまくいかなくて、
逆に遊び感覚で、自分が楽しみながらやったことや、
お客様の笑顔がすぐに見えてきたりしたことには
いい結果がついてくる。

私は今回、テーブルを増やしたとき、
一瞬でも最初に自分勝手な理由を思い浮かべてしまっていた。
でもその自分の思いを誤魔化して、
テーブルひとつ、運んで来てしまったのだ。

あ~、また!
こんな時、私は舌きりスズメの欲深ばあさんを思い出す。
ばあさんは、最後の最後になるまで自分が何をやっているのか、
何を生み出しているのかがわからなかった。

けれど私は、
自分の行動のもとにあるものが何なのかを明確にしていれば、
自分が何を生み出そうとしているのか、が
わかっていたはずだった。

だからいつも気をつけて、
少しでも 最初にヨコシマな考えが浮かべば行動することをやめる。

商売は儲けるのが社会的な義務だけど、
それは後からついてくるもの。

先立つものはいつも、
お天道様にどこから照らし出されても
恥ずかしくない「思い」だけ。
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by S_Nalco | 2011-04-09 14:23 | 気づき
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