Small Town

この町は何年か前に、
ベスト・オブ・スモール・タウンの
いくつかのうちに選ばれたことがあるらしい。

普段でも夜、9時を過ぎれば通りは静まりかえるし、
日曜日には商店街も閉まっている。
開いているのは、大手のチェーン店だけ。

町中がこぞってファミリー志向だから、
休みにまで働いている人なんてそういない、っていうのがこの町の特色?

うちも右へ倣えで、ウイークデイは8時半に閉まる。
それがある夜 8時頃に店に電話が鳴った。

「9時に予約したいんだけど」
とお客さん。

「済みません、8時半に閉店なんですよ」

私がそう答えると、
相手が突然怒り始めた。

「なんで、そんなに早く閉まっちまうんだよ!こんな町、大嫌いだ。
俺は早くロサンジェルスに引っ越したくてうずうずしてるんだ、
この町に住んでる、俺の友達は皆んなそう言ってるのに、
どこも遅くまで店を開けてくれちゃいない、
8時半なんて、俺たち仕事で、無理なんだよ」

彼の不満がとめどもなく私に降り注がれる。

わかるわ、その気持ち。
若者ならなおさらそう思うのも無理はないし。

でもここは、小さな田舎町。
べつにロサンジェルスみたいな
大都会のようである必要なんてないのだからね。

だから、早く、この町を出て、大都会に行くべきよ。

そう心の中で言っていた。

ひとしきりこの町をののしったあとで、若い男の声は私に言った。
 

「じゃ、8時半までに行くからテーブルとっといてね」

これだけ文句を言っておいて、
まさか来るとは思ってもみなかったのでびっくりした。

なんか可愛い。

やっぱりスモールタウンだ。


若い子たちが遊ぶようなところはあまりないけれど、
ここはこの小ささゆえに
なんだか居心地がいいところがある。
出戻りが多いのはそのせいだ。

「一度はこの町を出ていったほうがいいよ」

若いスタッフに良くそう言っているので、
彼らが広い世の中に出て行くときは文句も言えない。

今日も、22歳の女性スタッフが 
ハワイで暮らし、そこの学校へ行ってみる、
と言って最後のディナーに家族や友人と来てくれた。

私は彼女へのはなむけに、バイト先への紹介状を書いてあげた。

惜しまれて辞めることこそ、次への最大の飛躍。

この町で生まれ、育った彼女、
きっと彼女は
うまくやるに決まってる。
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by S_Nalco | 2011-06-07 18:16 | コミュニティ
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