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TATTOOの理由

店には若い人も多く働いてくれているけれど、
共通点を挙げるなら、皆んな素直。
不器用でも、歩みが遅くても、
素直に聞く耳さえあれば、
本人はどんどん上達していくものだということを
これまでに沢山の人を雇ってみてわかった。

19歳の男の子は、
地元の大学で勉強しながら、うちでアルバイトをしている。

「働く」ということがどういうことなのか、
というところから、教えなければならなかったけれど、
一心にこちらの伝えることを聞こうとする態度と 
諦めないところが気に入っている。

ある日、仕事の途中で、
「家でちょっと大変なことが起こったんです。帰ってもいいですか?」
と青い顔をして言ってきた。
もちろん、と言って、急いで引継ぎをして帰らせた。

何があったのかは今も聞いてない。

いったい何が起こったのか、というよりも、
大人になる過程で起こる出来事によって 
導かれる、彼の思考の行方を思った。

その後入った携帯電話のメッセージには、
「これまでの僕の人生で最悪の出来事が起こった、今も手が震えてる」
とあり、翌日の仕事も休んだ。

結局、お客様相手で暗い顔をしては出来ない仕事なので、
「一週間ほど休んだら」、
と私のほうから提案した。

「私でできることがあれば何でも言ってね」
とメッセージを送ると、
日本語で、
「記憶」
という文字の写真を送ってきて、
「これは“メモリー”っていう日本語で合ってる?」
と聞いてきた。

「Nalco、僕はもっといい人間にならなければならないよ。
僕はTATTOO(入れ墨)には興味なかったけど、
今度ばかりはこの文字を入れ墨しようと思ってるんだ。
いつも、いつも自分の腕に刻まれたこの文字を見るたび、
あの日に起こったことを思い出し、
自分がもっといい人間になれるようにと願うんだ。」

彼の大型犬のような忠実な瞳を思い出した。

そこまでしなくても・・・・、
やっぱりTATTOOには反対派の私はとっさに思う。

「記憶って文字はそれであってるけど、
TATTOOに関しては、またゆっくり話そうよ。
そうでなくっても、あなたはもうすでに前よりも、もっといい人間になってるよ。」

私は彼にそう、メッセージを返した。

日本の「入れ墨」とは違って、
こちらではまるでポップ・アートの感覚で、
この小さな町に、3軒もTATTOOショップがあるほど
多くの人が身体のどこかに、TATTOOを入れている。

なかでも、漢字をTATTOOにするのは「クール」だと思われているようで、
「愛」や「友」、「忍耐」、こんな字まで?と思うようなものまでよく見かける。
(「夫」と自分の首筋に入れている初老の男性もいた)。
一生モノになるはずのTATTOO、
洋服のように脱ぎ捨てられるわけでもないのに、
人はどうしてそんなに簡単に自分の身体の一部にできるのかな?

ところで、次に会ったとき、
彼はすでに「記憶」をTATTOOにしてしまっていた。
しかも手首にかなり大きく。
これならば長袖を着ていても、
この文字はいつも彼に存在を主張していられる。

「今日、中国人のお客さんが来て
(記憶)の
中国読みを教えてくれたんだ。」

笑う彼を見て、
これで彼のまっすぐな心に
彼なりのけじめをつけたんだなあ、と眺めている。
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うそでしょう???
by S_Nalco | 2011-11-20 18:34 | 日記
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