楽しさへの追求

今年の1月1日に、地元紙ではなく、
わりと大きめな新聞にお店を紹介してもらったお陰で、
ホリデーシーズンが終わった今も毎日レストランが忙しい。

スタッフが時々使う、
間違ったり、出来なかったときの言い訳のトップに、
「忙しかったから」
というのがあるけれど、
その言葉を聞くたびに私はいつも正してきた。

「店は忙しくなくちゃいけないの。
 忙しさを 
 対応できなかったことへの
 自分の言い訳にしてはいけないよ」


だからこそ皆んなが助け合える、チームワークが重要になってくる。

先週、こんなことがあった。

ランチタイムの混雑したさなかに
ひとりのウエイトレスが私に言うのだ。

「Nalco,
枝豆をひとり分、お湯で洗って流してきてくれないかな?」

枝豆は普通、朝に茹でたぶんを大きなコンテナーに入れておいて、
それをオーダーが入ればひとり分ずつすぐに出せるようにしてある。

「一番のテーブルのお客さん、
減塩しているの。
枝豆が食べたいらしいから、
お湯で塩を抜いて出したらいいかな、と思って」、
とそのスタッフが説明したのを聞いて、
私は思わず笑い出した。

なんて、可愛いことを言うんだろう。
そして、お客様のために
彼女が自分なりに考えてみたことに、
私の心がほころんだ。

うちでは基本的にはお客様のダイエットには
忠実にお応えするのがモットーで、
だから、
ベジタリアンや、卵なしのビガンのメニューのページの他、
特別にウィート・フリー(小麦を使わない)メニューもある。
だからそれらに対応したドレッシングや、塩を使っていないソース、
デザートも用意してある。

「枝豆はね、塩茹でしているからすでに塩味がついてるの。
お湯で洗っただけでは抜けないし、美味しくなくなるよ。」

私は彼女が一生懸命考え出した作戦に水を差した。

もちろんキッチンにひとり分、茹でてもらうことは頼めるけれど、
こんな忙しいときにそこまで頼むのは気がひける。

こんなときには、ダイニングのスタッフが
お客様のオーダーを誘導していくのが大切になってくる。

そもそも枝豆は近所のスーパーマーケットでも
いつでも冷凍で売っているくらい、
アメリカでもポピュラーで、
うちでなければ食べられない、
というものではない。

それに、
時間がかからずに、すぐに出せるおつまみは枝豆でなくても
他にも沢山のチョイスがある。
それらはドレッシングやソースが別になっているので、
塩なし、というのは可能だ。

どんな時、何を、お客様にお勧めするのか、
お客様のリクエストをそのまま鵜呑みにして
やり慣れないことをするよりも、
それに変わる何か、提供出来るものを伝えたほうが、
こちらとしてもリスクが少ないし、
お客様にもより早く、美味しいものを食べて頂ける。

ダイニング・スタッフの仕事は
ただお客様のオーダーを取ってくるだけでなく、
キッチンと、お客様の橋渡しをすること。
特にうちのような小さな店で、
あらゆるお客さまのニーズに応えようとするなら。



そんな、以前にも増して忙しい日々が続く中にでも、
お客様から
「スタッフがとても楽しそうに働いている」、
と幾つものコメントがくると、
うちのスタッフも本当によくやるようになったなあ、
としみじみ思う。

忙しさが、
嬉々とした態度に変換されるようになってくると、
大したものだと思う。

こんなときだからこそ、
笑顔を忘れず、
お客様からは見えないダイニング・ステーションでは
「忙し~よ~
でも、こういうの大好き!」
とそれぞれがドリンクを作ったり、
デザートを盛り付けたり、
手をせっせと動かしている。

誰が始めたかしらないけれど、
最近では、忙しくなってくると、
皆んなが口ずさむ変なハナ歌がある。


私は今年になって、
7人のダイニングスタッフと
ひとりづつ時間を持って話をした。

細かい注意事項、日々やるべきことは
全部紙に書いてリストにしてある。
だから言うことはただひとつ、
いつでもリストをおろそかにせず、
それに沿って仕事をしてね、
ということだけ。

あとは
私がどんなにその人に感謝しているかを伝えて、
相手の心がオープンになった
楽しい雰囲気のなかで
お店のことについて話をする。
そうすると、本人が向かうべき方向、
気づきが、
自然に会話に上ってくる。
充実したミーティングになる。

仕事は楽しくなくちゃいけない。

その楽しさの中で
常にクオリティを高めていく自覚があれば、
私たちは、楽しさをクリエイトする、
という循環の中にいられるだろう。



今、一緒に働いてくれているスタッフに心から感謝している。

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by S_Nalco | 2012-01-16 11:32 | ホスピタリティ
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