お客様のために

先日、新しく入ったウエイトレスの女性に、
「この仕事(レストラン・サービス)は
あなたのやることじゃないと思うの。
だからここを辞めて他のことへ向かったほうが、
あなたの時間の無駄にならないと思うわよ」
と 話さなければならなかった。

きちんとした大学を出ていて、
仕事にも一生懸命取り組む人だと思った。
でも、レストランでのお客様サービスには向いていないと判断したからだった。

彼女はどんなにか、
この職場のあり方や、
コミュニティとのつながり方、
働いている人たちのことが好きかを力説して、
再度チャンスが欲しいと 
情熱的に私に語ってくれたので 私はそれ以上を言えなかった。

それが彼女の本心なのか、
ただ「辞めさせられる」ということへの拒否反応なのかはわからないところだけど、
これだけ「もっと頑張ってみたい」と
私を口説いた人はこれまでにいなかった。

あるビジネスの本、
(どの本だったか忘れてしまった)に
「とにかく頼んでみること」
を進めているものがあった。

世の中には
「たぶんだめだろう」と
初めから諦めてしまうことが多い。
でも、とりあえず聞いてみる、
頼んでみることで
相手から「YES」を引き出すのは
そんなに難しいことではない、
と書いてあったのを思い出した。
人は誰でも 
誰かの役にたちたい、
誰かを喜ばせたい、
という思いを根底に持っているものだから、
ひょっとするとあなたの望みを聞き入れてくれるかもしれないと。

私は彼女が何故、
レストランで働きたいと強く願っているのかを知っていたから、
なおさらだった。
彼女の意図がどこにあるのか、
彼女がその先に何を見たいと思っているのか、

それらは彼女と初めに面接したときに聞いていた。

でも、
私たちの側から見てみれば、
彼女がどこまで私たちの期待に応えられるのか、
それが疑問になってしまっていた。

ある期間、
新しい仕事を覚え、理解するために一生懸命に働くのは
自分自身のためで、
もちろんその自分自身のためだけにも、
力を発揮できない気の毒な人もいるけれど、

いったん人並みに仕事ができるくらいになって、
今度は
「自分のため」から
「お客様のため」、
「店のため」に 頑張れるようになったとき、
その人が飛躍的に伸びていくのを私は何度か見てきた。
それはまさしくさなぎから蝶へ、というくらいの飛躍で、
いつまでたっても
「自分のため」だけに仕事をしている人とはものすごい差がついてくる。

私は「もう一度チャンスが欲しい」という彼女が
「お客様のために」頑張ることがどんなに楽しいことか、
いづれ知るようになればいいな、と思う。
そうすれば彼女の笑顔も自然と輝いてくるはずだから。

もし彼女がここでそんな気持ちにならなかったとしても、
「誰かのために」が、
「自分の楽しみ」になるような仕事を今度は見つけるように
私が彼女を口説くことにしよう。
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by S_Nalco | 2012-11-24 10:41 | ホスピタリティ
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