カテゴリ:ホスピタリティ( 22 )

We are lucky!

新しい年が始まって、
まずやるべきはスタッフ、ひとりひとりとのミーティング。

今年一年、私たちが期待すること、
相手の期待すること、
年の終わりに望む結果、
それらを明確にして、
この一年がスタッフにとっても、私たちにとっても、
去年とは確実に何かが違う、わくわくした年にしたい。


働く人、仲が良くて、30人という人数的にも微妙な数なので、
ややもすると大家族の馴れ合いみたいなものが生じる。

ほど良い緊張感のある職場を保つためにも、
ひとりひとりと、店全体の目標を傍らにすすんでいかなければ
ほんとに一年なんてあっという間。


さて、私が今年一番にミーティングをしたのは
ダイニングスタッフで、
最近ホステスを任せるようになったHさん。

近所にあるファンシーなレストランにはまだ行ったことがないというので、
そこでランチをしながら1時間半、
ゆくゆくは自分のカフェを持ちたいという彼女自身、
「もし私がオーナーだったら、」という視点で仕事に臨んでくれるので
話していても建設的な広がりがあって楽しい。

オーナーとしての私の気持ちも視点に入っていて、
話しているとこちらが癒されたりして(笑)。

「先週の土曜日ね、お客様が来店されて勝手に自分たちで席についてしまったの」。
彼女が話し始めた。
「予約で席がいっぱいで余裕はなかったのよね、
でもスシ・カウンターだけは空いていたので、
そのお客様に説明して、
済みませんが、スシ・カウンターに移動してもらえませんか、
って頼んだのよ。
でも、信じられる?
嫌だ、って席を譲ってくれなかったの!」

そんなお客様なんてこの10年、いなかったと思う。
たいていの場合、勝手に座ってしまったことに対して恐縮されて、
そしてお互い恐縮し合ってうまく事は運ぶはずだった。

「他のスタッフの中には、
そのお客様に対して接客しなければいい、
っていう人もいたんだけど、
私はただその席を諦めて、
予約していたお客様には説明して謝って
スシ・カウンターに座ってもらったの。

私のそのやり方でよかったかしら、
Nalcoだったらどうした?」


「あら、私もあなたと同じよ、
お客様が席を立たれなかったことは驚きだけど、
仕方ないわよね。
こっちが意固地になって接客しないなんてあり得ない!
いったん店に入った以上は楽しく帰ってもらわなきゃ。
それに予約していたお客様はスシ・カウンターでも構わないって、
言ってくれたんでしょう?」

「そうなの、すごいラッキー。
スシ・カウンターは嫌だって言う人も多いのにね、
たまたまカウンターでもOKなカップルだったの」

(*逆にスシ・カウンターでなければ、というお客様も多いです。)


彼女をホステスとしてトレーニングを始めたときには、
次のリザベーションの時間が迫ってくる頃になると
そわそわして落ちつかなかった。

「Nalco, あのテーブルは20分後には予約が入ってるのに、無理そうだわ、
どうしよう? 」

見ると常連のお客様。
このお客様はいつもおしゃべりに花が咲いて食事も時間をかけて楽しまれる。
次の予約を取るのが早すぎたくらい。

「あと20分で、次の予約が入ってるんです、
って言ってあげたほうがいいかしら?!」というHさんに私は、

「今はデザートの最中だし、ぎりぎりまで待ってみましょうよ。
予約していた人が遅く現れることもあるしね、」となだめた。

結果、その5分もたたないうちに予約キャンセルの電話がかかってきて、
Hさんはそのタイミングに
「WOW!」。

自分ではどうしようもできないことが沢山あるわよ、
でも、いったん自分の出来ることをしたら、
あとは
「we are lucky!」って信じているだけよ。

私はいつもそう言う。
自分のためじゃなくて、
お客様のこと、人のことを思ってやっていると
良いアイデアが湧いてきたり、
思わぬ助け舟がきたりする。

誰かのために働くことは、
宇宙の願うところだから、
きっと最後にはツジツマがあうようになっている。

「we are lucky!」
って自信を持って言えるのは
そういうことかな、

それって、接客の醍醐味かもね。

Hさんはミーティングの間、私が彼女に質問する以上に、
私に色んな質問をしてきたけど、

うまく答えられたかどうか自信がない。

でも、私が自分の見栄とか立場からではなく、
彼女のことを思って答えた答えなら、
きっと宇宙がそのあとは
フォローしてくれるんじゃないかと・・・

ね?
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by S_Nalco | 2013-01-06 14:37 | ホスピタリティ

お客様のために

先日、新しく入ったウエイトレスの女性に、
「この仕事(レストラン・サービス)は
あなたのやることじゃないと思うの。
だからここを辞めて他のことへ向かったほうが、
あなたの時間の無駄にならないと思うわよ」
と 話さなければならなかった。

きちんとした大学を出ていて、
仕事にも一生懸命取り組む人だと思った。
でも、レストランでのお客様サービスには向いていないと判断したからだった。

彼女はどんなにか、
この職場のあり方や、
コミュニティとのつながり方、
働いている人たちのことが好きかを力説して、
再度チャンスが欲しいと 
情熱的に私に語ってくれたので 私はそれ以上を言えなかった。

それが彼女の本心なのか、
ただ「辞めさせられる」ということへの拒否反応なのかはわからないところだけど、
これだけ「もっと頑張ってみたい」と
私を口説いた人はこれまでにいなかった。

あるビジネスの本、
(どの本だったか忘れてしまった)に
「とにかく頼んでみること」
を進めているものがあった。

世の中には
「たぶんだめだろう」と
初めから諦めてしまうことが多い。
でも、とりあえず聞いてみる、
頼んでみることで
相手から「YES」を引き出すのは
そんなに難しいことではない、
と書いてあったのを思い出した。
人は誰でも 
誰かの役にたちたい、
誰かを喜ばせたい、
という思いを根底に持っているものだから、
ひょっとするとあなたの望みを聞き入れてくれるかもしれないと。

私は彼女が何故、
レストランで働きたいと強く願っているのかを知っていたから、
なおさらだった。
彼女の意図がどこにあるのか、
彼女がその先に何を見たいと思っているのか、

それらは彼女と初めに面接したときに聞いていた。

でも、
私たちの側から見てみれば、
彼女がどこまで私たちの期待に応えられるのか、
それが疑問になってしまっていた。

ある期間、
新しい仕事を覚え、理解するために一生懸命に働くのは
自分自身のためで、
もちろんその自分自身のためだけにも、
力を発揮できない気の毒な人もいるけれど、

いったん人並みに仕事ができるくらいになって、
今度は
「自分のため」から
「お客様のため」、
「店のため」に 頑張れるようになったとき、
その人が飛躍的に伸びていくのを私は何度か見てきた。
それはまさしくさなぎから蝶へ、というくらいの飛躍で、
いつまでたっても
「自分のため」だけに仕事をしている人とはものすごい差がついてくる。

私は「もう一度チャンスが欲しい」という彼女が
「お客様のために」頑張ることがどんなに楽しいことか、
いづれ知るようになればいいな、と思う。
そうすれば彼女の笑顔も自然と輝いてくるはずだから。

もし彼女がここでそんな気持ちにならなかったとしても、
「誰かのために」が、
「自分の楽しみ」になるような仕事を今度は見つけるように
私が彼女を口説くことにしよう。
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by S_Nalco | 2012-11-24 10:41 | ホスピタリティ

質問のマジック

店では1時間半から2時間ほどの間を空けて、
次の予約を取ることになっている。
もちろんそれをオーバーされるお客様もあるので
次に空くテーブルを予測しながら、
予約をなんとかこなしていくのはけっこう大変な仕事でもある。

週末はたいてい予約で一杯で、
席のゆとりがないのが現状なので、
場合によっては、
食事を済ませ、
お勘定も終わり、
ただお喋りを楽しんでいるお客様には、
事情を話して、席を立ってもらうようお願いしなければならない。
(滅多にはないけど、これが一番嫌な仕事かもしれない)。

中には、気を利かせたお客さまのほうから、
「このテーブル、次の予約は何時になってるの?」
と聞いて下さる有り難い人もいる。

さて、先週の土曜日は、
パティオで15人のバースディ・パーティがあった。
十分な時間を空けて次の予約を取っていたけれど、
そのパーティ、予約の時間から50分を過ぎても全員が集まらない。
明らかにパーティは長引きそう。

テーブルを見に行くと、
中央にはお客様が自分たちで持って来た花束が飾られて、
誰もがにこやかで、和やかな雰囲気だった。
私の顔を見るなり、
挨拶をしてくれる常連のお客様も何人かあった。

予約シートをもう一度覗くと、キャンセルが二つ入っていた。
週末なのでキャンセル待ちも多い。
けれど、私はフロントを担当している若い男性に、
「今日はパーティの後に予約しているお客様を 
キャンセルの入ったテーブルに座ってもらいましょう。
そうして、パーティはゆっくり楽しんでもらうの」
と、提案した。

けれど、その若いスタッフの心のうちは、
次にも同じことがあったときの心配、
それから6時の予約がいつまでたっても始まらない、
マナー違反に対する正義感。
「次の予約が入ってることをちゃんと伝えたほうがいいのでは?」、と言う。

それはよくわかるし、正しいのかもしれないけれど、
所詮、店の都合でしかないな、と思うと私の気持ちは萎えてしまう。


それに、同じような状況でも、
月曜日など暇な日であれば、
次の予約がないせいで私たちも気を揉むことがない。
「暇だったから、今日のお客さんゆっくりしてても大丈夫だったわね~」
なんて会話がウエイトレスの間で交わされる。

席がなくて、どうしようもないときには、
仕方がなくても、
キャンセルが出たのであれば、
なんとかできる。

それに、15人が集まる誕生日パーティで、
何かあれば、
それは後々までに語り継がれることになる。
「あの時の、誕生日パーティ、
私達、お店のほうから急かせれちゃって」
なんて誕生日が来るたびに、当分の間 思い出すかもしれない。

沢山のお客様が
誕生日を祝うために、うちを利用してくださる。
一年に一度の、
その人だけの大切な日を、
私たちも本当に大切に思い、
素敵なバースディ・ディナーになるようにお手伝いしたい。

「何が大切か」、
何かを決めなければならないとき、
いつもそう問いかける癖をつけておくと、
安心できる。
ごちゃごちゃした雑音がなりを潜めてくれて、
ある一筋が光ってくる。

そうでなくても、
沢山の人が出入りする忙しい中で、
予測していなかったことが起きたとき、
とっさに、後悔しない選択ができるように、
この質問は
とても有効だと思う。
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by S_Nalco | 2012-03-05 16:03 | ホスピタリティ

お母さんの食事

バレンタインズ・デーは一年で一番忙しい。
それでも、お客様の持ってくる、
LOVELYで、SWEETなエネルギーで
店が満たされていく様子は本当に素敵、
私の一番お気に入りの日でもある。

若い人から年配の方まで、
この国は、いつまでたっても人を若々しくさせてくれる。
どんなに年をとっても、
テーブルの上、二人で手を握りあい、
それぞれの世界を楽しむことができるのだから。

ところで、レストランの予約は早くから一杯でも、
毎年スシバーの何席かだけは
どんなにリクエストがあっても予約のないままで空けている。
この日、
毎年一人でふらりと来られるお客様が数人、
必ずいらっしゃるから。

「こんな日だからこそ、ひとりで来られるお客様を大切にしたい」
というのが店のモットー、
そしてもう一つ、
子供連れのカップルにも私達は特別に気を使う。

私がそうだったけれど、
一人目の子供のときにはまだまだ自分が若く、
自分の楽しみを諦められずに、外食に出たりする。
そして途中で子供がぐずったりして
十分楽しめずに家路に着くことがよくあった。
子供が小さいうちは、
家でのんびり食事したほうがマシと
思えるようになったのは、二人目が生まれてからだった。

普段でも、私は子供連れのお客様には気を使う。
赤ちゃんが寝ていると、
「あ、今のうちにお母さんに食べてもらおう」、
とか、こちらで提供している塗り絵に
子供が集中しているのを横目で見ながら、
フードの出来上がり時間を計ったりしている。

先日などは席が空くのを待っていた常連の家族がやっと座ると、
キッチンスタッフが、
「早くしないと、あの子供たちは8時を過ぎると眠くなってぐずるんだよ!」
とウエイトレスにオーダーを早く取るようにと気をもんでいる。

こうして店全体が子供連れの家族を気に掛けている光景を私は自慢に思う。

お客様のほうでも私たちの対応を見て、
「ここは子供連れもいいのね、今度は私も子供を連れて来るわ」
と言われる。

決して安い価格設定の店ではないけれど、
子供たちの笑顔が店にある光景、
というのが私も夫も大好きで、
そこに私たちの店の原点もあると信じている。
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しかもうちに来るような子供たちは
たいていマナーもしっかりしていて、
大変な思いをすることなど、一年に一度?あるくらい。
それどころか
「今日のお刺身はとても美味しかったです」と、
お客様コメントに残していく7歳の常連さんもいるくらい(笑)。

さて、今年のバレンタインズ・デーでは
1歳になる前の赤ちゃん連れで来店されたものの、
赤ちゃんの歯が生える時期と重なって、
お母さんはお父さんと入れ替わりで赤ちゃんをあやしていた。

このカップルは恋人同士の頃から、たまに来てくれていた。
けれど今回は食事が運ばれてきたときには、
赤ちゃんはすっかりご機嫌ななめ。
仕方なく殆ど食べることもなく家に持ち帰り、という顛末に。

普段子育てで精一杯で、
自分のことはいつも後回しになってしまうお母さんが、
子供がご機嫌なうちに無事に食事を済ませることができるのを見るたびに、
私は心の中でガッツ・ポーズをしている。
だから、
「次は来る前に電話でオーダーを入れておくといいわよね、
そうしたら席に着いたらすぐに食べられるわ!」
帰り際に私はそのカップルにそう提案した。

もちろんレストランでは席に着いてから、
ドリンクからアペタイザー、メイン、デザートと
ゆっくりと食事や雰囲気、サービスも楽しむことが理想的ではあるけれど、
子連れのお母さんにとっては、
自分のお気に入りのレストランで、
座って食事ができるだけで日ごろの疲れもふっとぶというもの。

肌の瑞々しい、可愛らしい笑顔の若いお母さん、
今年、その日のことも、
またひとつのバレンタインズ・デーの思い出となって、
いつか、
「どうしてあんなに無理して、外食しようとしたのかしら」
と振り返る日が来るのかな、と自分のことと合わせて思う。

それでも、私はいつもそんなお母さん方の味方で有り続けたい。
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by S_Nalco | 2012-02-20 19:41 | ホスピタリティ

楽しさへの追求

今年の1月1日に、地元紙ではなく、
わりと大きめな新聞にお店を紹介してもらったお陰で、
ホリデーシーズンが終わった今も毎日レストランが忙しい。

スタッフが時々使う、
間違ったり、出来なかったときの言い訳のトップに、
「忙しかったから」
というのがあるけれど、
その言葉を聞くたびに私はいつも正してきた。

「店は忙しくなくちゃいけないの。
 忙しさを 
 対応できなかったことへの
 自分の言い訳にしてはいけないよ」


だからこそ皆んなが助け合える、チームワークが重要になってくる。

先週、こんなことがあった。

ランチタイムの混雑したさなかに
ひとりのウエイトレスが私に言うのだ。

「Nalco,
枝豆をひとり分、お湯で洗って流してきてくれないかな?」

枝豆は普通、朝に茹でたぶんを大きなコンテナーに入れておいて、
それをオーダーが入ればひとり分ずつすぐに出せるようにしてある。

「一番のテーブルのお客さん、
減塩しているの。
枝豆が食べたいらしいから、
お湯で塩を抜いて出したらいいかな、と思って」、
とそのスタッフが説明したのを聞いて、
私は思わず笑い出した。

なんて、可愛いことを言うんだろう。
そして、お客様のために
彼女が自分なりに考えてみたことに、
私の心がほころんだ。

うちでは基本的にはお客様のダイエットには
忠実にお応えするのがモットーで、
だから、
ベジタリアンや、卵なしのビガンのメニューのページの他、
特別にウィート・フリー(小麦を使わない)メニューもある。
だからそれらに対応したドレッシングや、塩を使っていないソース、
デザートも用意してある。

「枝豆はね、塩茹でしているからすでに塩味がついてるの。
お湯で洗っただけでは抜けないし、美味しくなくなるよ。」

私は彼女が一生懸命考え出した作戦に水を差した。

もちろんキッチンにひとり分、茹でてもらうことは頼めるけれど、
こんな忙しいときにそこまで頼むのは気がひける。

こんなときには、ダイニングのスタッフが
お客様のオーダーを誘導していくのが大切になってくる。

そもそも枝豆は近所のスーパーマーケットでも
いつでも冷凍で売っているくらい、
アメリカでもポピュラーで、
うちでなければ食べられない、
というものではない。

それに、
時間がかからずに、すぐに出せるおつまみは枝豆でなくても
他にも沢山のチョイスがある。
それらはドレッシングやソースが別になっているので、
塩なし、というのは可能だ。

どんな時、何を、お客様にお勧めするのか、
お客様のリクエストをそのまま鵜呑みにして
やり慣れないことをするよりも、
それに変わる何か、提供出来るものを伝えたほうが、
こちらとしてもリスクが少ないし、
お客様にもより早く、美味しいものを食べて頂ける。

ダイニング・スタッフの仕事は
ただお客様のオーダーを取ってくるだけでなく、
キッチンと、お客様の橋渡しをすること。
特にうちのような小さな店で、
あらゆるお客さまのニーズに応えようとするなら。



そんな、以前にも増して忙しい日々が続く中にでも、
お客様から
「スタッフがとても楽しそうに働いている」、
と幾つものコメントがくると、
うちのスタッフも本当によくやるようになったなあ、
としみじみ思う。

忙しさが、
嬉々とした態度に変換されるようになってくると、
大したものだと思う。

こんなときだからこそ、
笑顔を忘れず、
お客様からは見えないダイニング・ステーションでは
「忙し~よ~
でも、こういうの大好き!」
とそれぞれがドリンクを作ったり、
デザートを盛り付けたり、
手をせっせと動かしている。

誰が始めたかしらないけれど、
最近では、忙しくなってくると、
皆んなが口ずさむ変なハナ歌がある。


私は今年になって、
7人のダイニングスタッフと
ひとりづつ時間を持って話をした。

細かい注意事項、日々やるべきことは
全部紙に書いてリストにしてある。
だから言うことはただひとつ、
いつでもリストをおろそかにせず、
それに沿って仕事をしてね、
ということだけ。

あとは
私がどんなにその人に感謝しているかを伝えて、
相手の心がオープンになった
楽しい雰囲気のなかで
お店のことについて話をする。
そうすると、本人が向かうべき方向、
気づきが、
自然に会話に上ってくる。
充実したミーティングになる。

仕事は楽しくなくちゃいけない。

その楽しさの中で
常にクオリティを高めていく自覚があれば、
私たちは、楽しさをクリエイトする、
という循環の中にいられるだろう。



今、一緒に働いてくれているスタッフに心から感謝している。

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by S_Nalco | 2012-01-16 11:32 | ホスピタリティ

いつも、いつも。

あれはハロウィンの夜のこと。
その夜の予約をされたお客様が、
前回の来店のときには満足な食事でなかったと
電話口で伝えられた。

前回は息子の誕生日で来たから、
何も悪いことは言わずにいたけれど、
肉の焼き加減など全般において気にいらなかった。
だから、今夜のディナーは無料にして欲しい、ということだった。

こんなお客様からのリクエストは開店以来始めてのこと。

その夜、50歳近いご夫婦が来店されたのを見ると 
私には馴染みのないお客様でハロウィンの日らしく、
ロリーポップキャンディを口に入れて頬を膨らませたまま席に着かれた。

前回彼らを担当したというウエイトレスが、
「あの日はとても機嫌良く帰られたと思ったのに」
とがっかりして言う。

その夜は 
ウエイトレスの中で一番長く働いてくれているSさんが
担当する席に その人たちが座った。
彼女なら大丈夫。
彼女で文句が出るようなら、
それはお客様の問題だわ、そう思った。

食べきれないほどの食事を注文されて、
デザートも召し上がって、
その様子を私はときどき見守りながら、
結局私はそのお客様とはお話しすることもなく時間が過ぎた。

ただ、帰られる時に、
「今日はどうでしたか?」
と声をかけると、
来たときとは違う、
大げさに言うとつきものが落ちたような柔らかいお顔で、
「ありがとう、美味しかったわ」
と言われて帰って行った。

営業が終わって、
一緒にテーブルを片付けながらSさんが言う。

「私ね、ありがとうございます、
って言ったんですよ、あの人たちに。
お店にとって悪いことを言うのって、
なかなかできることじゃないのに、
あえて言ってくれてありがとうございましたって。」
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私はあのお客様が帰られるときの表情を思い出した。
「そうだったんだ」

私は普通、クレームを伝えられたときには、
お客様にそのように言うのが常だった。
「言ってくださってありがとうございます」と、心からそう思う。
でも、今夜だけは、そのことを言うのはとてもはばかられた。言えない自分がいた。

「あなたが私の代わりに、ちゃんと伝えてくれたのね、そのお客様に。」
私はしみじみとした気持ちで
彼女の目を見てそう言った。

言えなかった自分をまだまだだな、と反省する気持ちを上回るほどに 
彼女の在り方が嬉しかった。
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by S_Nalco | 2011-11-13 16:40 | ホスピタリティ

チップというもの。

長女が 誕生日を迎えた末娘のお祝いに、
とサンフランシスコにある日本町に連れて行ってくれた。

末娘はそこで日本のコミックを買いたいのだという。

誕生日が一日違いの仲良しの友達を連れて、
そして他にも2,3の取り巻き(?)を連れて、
楽しい一日となったようだった。

けれど娘の友人のリクエストで 初めて入った回転寿司屋では帰り際に、
「20%のチップを置いてってくださいよ」
と怒鳴られるように言われてがっかりだったと言う。
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アメリカで生まれ育った彼女にしても、
水を出してくれただけの回転寿司は、
寿司のファースト・フードのように思えたのか、
チップを置き忘れたらしい。

その結果、レジのところですごい剣幕での言われようだったらしい。

「チップって、ありがとう、って言う気持ちで渡したいよね」

そう言う長女だけど、
「チップ」目当てに働く人にとっては
「ありがとう」の気持ちは別の次元の話でしかないのかもしれない。
そう思わせるくらい、ここでは「ありがとう」と
店員から聞くことが当たり前なことではない。
(その代わり、Have a nice day のほうを良く使うと思う)。
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チップが常識のアメリカでも、
日本から来た観光客は日本食レストランでは居心地が良すぎるのか、
チップを忘れる人が多いというのは聞いたことがある。

だから、ときたま観光地の日本食レストランの壁に
「チップを置いてください」のサインを貼り出しているのを見ると、
現実をおちゃらけた、滑稽な漫画の世界に来たような気がする。
お客も、店も、ご苦労なことだと思う。
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私の店では、チップのことを口にするのはある時期からご法度にしている。

「あの客はチップが少なかった」
「あんなにしてあげたのに、たったこれだけ」

そんな言葉をダイニングのスタッフから聞いていた頃、
聞いている方がいたたまれなかった。

私自身、日本にはない「チップ」の習慣に慣れないまま、
レストランを開いていた。


普通、ウエイトレスは自分のテーブルからのチップは
全部自分が独り占めできるのが常識となっている。

けれど、うちではチップはすべてひとつのビンに入れて、
あとで皆で分ける、というルールは初めから決めてあった。
もちろん最低賃金で働くダイニングスタッフが
大きな割合で貰えるわけだけど、
キッチンのスタッフも皿洗いの人まで分け前があるというように。

そもそも最低賃金と言っても、
ウエイトレスの時給は800円はあるし、
それで5時間働いただけで、
チップがおよそ1万円くらいあるとしたら、
キッチンで働いている人との時給の差はそれは大きい。

担当の税理士さんに聞けば、
「チップを分けるのは、最近はよくあることよ、だって、フェアーじゃないよね」
と同意は得られる。
それでも、まだまだマイナーな考えではある。


うちの店では「チップは分ける」ことが当たり前なので、
それが嫌な人は働きに来ない。

それでいいと思っている。

そもそも、スタッフ全員の働きがあって、
初めてお客様のトータルな満足がある。
それを自分ひとりの手柄と思うほうがおかしい。

全員でお客様を一緒にもてなしましょう、
そういう雰囲気なので、スタッフ全員、とても仲がいい。
“チーム・ワーク”は店の欠かせないキーワードのひとつ。
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けれど、なかにはチップを分けることに
密かに異議を唱える人もいる。

ならば辞めて、他に行けばいいものだが、
彼女はもう何年もいる。
そしてそんな彼女を私が雇っているのは、
彼女のウエイトレスとしての、
プロフェッショナルな自覚が素晴らしいと思っているから。

彼女は仕事も速ければ、
他の人の助けもするし、
キッチンとの連帯もいい。
ウエイトレスというのは、
「エンターテイメント」と、
この仕事を位置づけて、
どれだけお客様に楽しんでもらえるか、を演出している、と言う。

そんな彼女の心意気が私は好きでもあるし、
だからこそ、チップを分けるのは自分の意ではない、
というアメリカンな説得に力がある。

彼女ほどの人ならどんなレストランでも 
喜んで迎えてもらえるだろうと思うけれど、
ここが好きだから、と働き続けてくれている。
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ところが分けているとはいえ、
一人当たりのウエイトレスのチップの金額はそう悪いものではない。
他のレストランに比べてもそう劣りはしないと思うし、
ウエイトレスの満足度も悪くないのではないかと思う。
働く人で理由なく辞めていく人はいないし、
殆どの人は長く居てくれている。

要するに宇宙は、
私たちが「こう」と決めたルールにもとづいて、
皆が満足できるように取り計らってくれているような気がする。

店がたいてい繁盛しているのは、
私たちがチップを分けるているからではないかと
考えてみることもある。

今、私のスタッフは、
お客様のことを「チップの多少」で見ることはないし、
お客様の満足度を純粋に考えてくれているように思う。

もちろんチップで、お客様がどんなに喜んでくれたかを知る、
バロメーターになることもあるけれど、
極端に少ない場合は、文句を言う代わりに
「何がいけなかったか」
を考える謙虚さを持つスタッフばかりだと自負している。
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でも、チップのことで一番いい思いをしているのは、
実はオーナーである私だと密かに思っている。

何故なら法律で、オーナーは
チップを受け取ることができないからだ。

どんなにお客様に素晴らしいおもてなしをしても、
余分には一銭も受け取ることが出来ない、
ということは即ちその「行い」が
天国の銀行に預けられていることを
私は「日本の心」で知っている。

天国の銀行は現金よりずっといい。
必要なときにはおもわぬ形で助けてくれる。
しかも大きな利子をつけて。

私はそういうことを身を持って知った。
チップなんて目先だけの損なシステムだ。
日本は偉いな。
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by S_Nalco | 2011-10-23 15:26 | ホスピタリティ

記念日

私の仕事が済み、
店を出たのが夕方の5時半、少し前。

店の前には、すでにディナー待ちのお客様がちらほら。
その中にお店でよく見かける、親しい顔を見つけた。

今日が結婚42年目の記念日、
予約を取る電話のときに旦那様が
「だからパティオの席を頼むよ」
と言われていたカップル。

二人に「おめでとう!」とハグをしたあとで、
私は長年連れそうカップルに聞く恒例の質問をした。

「幸せな結婚生活の秘訣は?」


「ただ、幸運なめぐり合わせだっただけよ」


白髪の、
普段は、オーダーする彼女の食事についてくる、
ソースや、スパイスにこと細かく指示される奥様が
微笑みながら、こう一言 言ったとき、

ああ、この瞬間のことは
私はぜったい忘れないだろうな、
と思った。

それくらい綺麗で、
謙虚な、
幸せに満ちた笑顔。

こんな人たちに出会えるなんて
ほんとうに私は
それこそ幸運だ。

あんまりにも嬉しかったので、
そのことをフェイスブックの
店のページにもシェアーした。

お客様の記念日を
お祝いするお手伝いができることは楽しいこと、
でも、何よりも、
お客様の嬉しい気持ちがこちらにも伝わってきて、
私たちこそが幸せな気分にさせてもらっている、と。


気がつくと、
私はますますこの仕事が好きになっている。
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町のとある駐車場で見つけた車。
持ち主の誕生日か何か?
こんなふうに現すお祝いの気持ち、いいなあ。
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by S_Nalco | 2011-10-10 13:57 | ホスピタリティ

期待

お客さんの中には、
様々なことをリクエストする人がいる。

食べ物について言えば
きりがないので置いておいても、

例えば、営業時間前にも関わらず
店内に入れて欲しい、とか、

リザベーションでいっぱいで
席が空いてないことを注げると
不快を表す人、

中国料理と日本料理を混同していて、
席に着くなり、青島(チンタオ)ビールや、春巻きを注文して、
「置いていません」
と告げるとずいぶんがっかりされる。
(アジアをひとくくりにする人はずいぶんと多い)。

こちらはその都度、丁寧に説明する。

きちんと準備を整えて、
お客様を迎えたいので開店まで待って欲しいこと、
(雨の日や、暑い日、お年寄りの方は例外)

店が広くはないので 
すぐにリザベーションでいっぱいになってしまうこと、

サッポロやアサヒビール、
揚げ出し豆腐などならありますよ、

などと一度、謝ったうえで説明させてもらう。

でも、
こうしたことを繰り返しながらわかってきたのは、
お客様は、
「聞きたいことしか聞きたくない」
ものなのだということ。

だからこちらがどんなに、
フェア、と思える方法で説明したとしても、
お客様の中には
「自分が期待する答え」でなかったら
納得してくれないのだということ。

「自分が言いたいこと」
から
相手が私から
「何を聞きたいのか」、を感じ取って、
なるべくそれに添えるように答えていく、

そこから
「こちらの都合ではなく」、
「お客様の都合」
を優先させることを考える思考の道筋にも繋がる。

それはホスピタリティというスキルをあげるには、
とてもいい訓練になる。

ところが先日、
初めて来られてお好み焼きを注文した人がいた。

彼は、
「僕は、お好み焼きを東京でも、ニューヨークでも食べたけど、
ここはまったくトラディショナルではないね」
とコメントには書き残していた。

きっと広島風は初めてなのだろうし、
ウエイトレスもそう説明したらしいけれど、
期待には添えなかったらしい。

一緒に来た奥様のほうは満足して帰られたようだけど、
その違いは何か。

20年広島で暮らして、
お好み焼きを食べてきた私の素性を話したとしても、
彼はきっと納得してくれなかったように思う。

お客様の確固とした「期待」、
それを上手に裏切り、
上まわることのできるレストランにすること、

異国での、日本食レストランの課題かな、と思う。
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表面を焼いた白マグロとアボカドにガーリック、
バジルとオリーブオイルのソースの上にスライスのレモン。
ぜんぜんトラディショナルではないけど、期待を超える美味しさ、のはず。
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by S_Nalco | 2011-09-26 04:42 | ホスピタリティ

ある日、お客様のコメントカードに、

‘料理にかかっていたソースが私には多すぎました、
それをウエイトレスに伝えたところ、
次から気をつけます、とのこと。
そのような対応は良くないのでは?’

とあったのを見つけた。

普通、お客様から料理に関するこのようなクレームがあると、
すぐに取り替えさせてもらう。
「次から気をつけます」
なんていうのは有り得ない。

担当したウエイトレスのKさんに 
そのコメントカードを見せると、彼女はがっかりしたように言う。

「だって、そのお客さんは殆どを食べていたの。」

私は彼女のしょんぼりした顔を見て思わず笑った。

誰だって、特にこんな仕事をしていたら、
相手に喜んでもらえるようにと思いながら仕事をしている。

それでも、仕事に慣れすぎると、
仕事のオートマチック化が起こり、
細部まで気が届かないことも多々出てくる。

しかも人はみんなそれぞれだから、
臨機応変な対応の仕方が求められる。

「そう、殆どを食べてたのね、
だからどう対応していいか、わからなかったんだ。」

私は彼女を慰めるように言った。

たいていのお客さんは 
焼き具合が気に入らなかったり、
味付けが濃かったりすると、
そのままお皿に残して、ウエイトレスにそのことを伝える。

すぐにウエイトレスは取り替えるけれど、
ごくたまにではあるけれど 
全部を食べたあとで、
「気に入らなかった」ことを伝える人もいる。

「そういう時ってどうすればいいの?
全部食べちゃってるのに、ほんとに気に入らなかったのかしら?」
そんな風にいぶかるスタッフもいる。


「どんな時にでも、
誰にでも通用する対応の仕方はね、

どうして差し上げたらよろしいでしょうか、

ってお客さんに答えを出してもらうように 
こちらが質問をすることよ。


そうすれば、お客様のほうでリクエストされるから。

躊躇して、何もリクエストされない人には、
代わりを持ってきましょうか、
デザートやお酒をつけましょうか、
とかこちらが出来ることを何でも、
アイデアを提供してあげてね。」

私はKさんにそう伝えた。

そうでなくても、この質問をするだけでも
たいてのお客様は満足される。

自分の要求が全面的に受け入れらたことを確認することによって。

真摯に自分の言い分に、
それがどんなものであろうと
耳を傾けてくれたということに
喜んでもらえることもある。


立ち止まって、耳を澄ますとき、人はいろんな声を聞く。
言葉のうらに隠された人々の声だけでなく、
木や花や、風、
鳥からの声。

私はずっと以前に山の中で暮らしていたころに、
どんなにかたくさんの
自然からの声を、聞いていたかを思い出す。

あのときのように、
私に向けられた、すべての声に対して、
丁寧にそれを感じて、返していけたらと願う。

それがどんなに忙しい、レストランのランチの時間にあっても。
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by S_Nalco | 2011-09-06 06:51 | ホスピタリティ