カテゴリ:ホスピタリティ( 22 )

バレンタインズデー

バレンタインズデーは一年で一番忙しい日。

でも、誰もがすでに愛一杯で、
誰かさんと手をつないで来店してくれるこの日、
店内は本当にあたたかいLOVEのエネルギーで満ちているのを
毎年感じることのできる、素敵な日。

さて、数日前から予約で一杯になるにも関わらず、
当日も予約なしで立ち寄る人、
テイクアウトのオーダーでひっきりなしに鳴る電話、
そんな時に一組の老夫婦がやって来た。

彼らのシートはカウンター席、と予約シートには書いてある。

それでカウンター席に通そうとすると、
二人はきっぱりと、
「カウンターには予約してない」、と。

何かの間違い。

白髪の二人のうち奥様のほうは杖をついていて、
入口の椅子にすでに腰かけて、
頑としてテーブル席を待つ体制。

けれどその時点で、空いている席はただひとつ、
しかも30分したら来ることになっている4人のお客様の予約席だった。

若い人へなら、事情を説明して
カウンターに座ってもらうしか
他にチョイスはないのだということを説明するけれど、
この老夫婦に、他に何と言えるだろう?

「テーブル席を用意しましたよ、こちらへどうぞ」。

後先考えずに流れに乗ってしまうしかないことがある。
その時の状況にあわせて「最善を尽くす」。

あとから来る4人のお客様のことを考える暇もないくらい忙しくて、
ついにそのときがやってきた。

中年のダブルデートのカップル。

ふたりきりでなかったのが良かった。
4人は着いたときからすでに彼らのお喋りに夢中で、ノリが良かった。
私が こちらの手違いで席がまだ空いてないのだと告げると、

「いいわよ、また明日来るから、気にしないで。」とあっさり。

たいていのお客様にこんなことを言えば
激怒されるのがあたりまえなのに。

聞けば、はじめからうちか、
もうひとつ、町にあるスシ屋か決めかねていたのだそう。
そのレストランは広いので予約なしでも入れるし遅くまで空いている。
「そこに行くわよ!」と笑顔で出て行かれた。

こんなお客様に当たるとはほんとうにラッキーなこと。

けれど、いつも色んな形で私達はラッキーなのだ。

その時の状況で
「最善を尽くす」ことで、
宇宙は欠けた何かを取り戻そうと動いてくれるようだと気づいたのは、
いつ頃だったのだろう?

今日のような
「他の店に行くからいいわよ」と、
バレンタインズデーのようなスペシャルな日に、
そんなことを言ってくれるお客様は本当に稀だけど、
キャンセルが入ったり、
遅くなるからと連絡があったり、
前のお客様が予定より早く帰ったりして
終わってみれば、
たいていツジツマがあうようになっている。
(他にも急きょ、余分のテーブルを押し込んだり、
お隣のテイクアウトの店に席を作ったこともある)

以前は今日のような日があるたびに 私はパニックに陥り、
そしていつもこんなふうに助け舟が出されたり
アイデアが湧いてきたりして、事なきを得る、
結局は 誰もがハッピーエンドになる体験を多くして、
今は心配する代わりに、
「大丈夫、うまくいく」と自分に言い聞かせる。

瞬間、瞬間で最善を尽くすこと。
同時に全体を眺めている視点をもつこと。

このふたつを同時に試されていることがわかったから。

だからと言って、あぐらをかいているのではない。
そんなことをしたら宇宙のサポートシステムから外されてしまう。
ただ、「心配する」というエネルギーは何も助けにはならない。

カウンター席が大嫌いな例の老夫婦は、
テーブルにコメントカードを残してくれた。

「11年前に日本でお好み焼きを食べて以来、大好きになりました。
このへんの日本食レストランでお好み焼きが食べられるのはここだけ。
ほんとうにありがとう。」

席がなくて帰ったもらった4人のお客様には、
翌日お詫びの電話を入れた。

次に来店するときのスペシャルサービスを約束して。
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by S_Nalco | 2011-02-22 07:13 | ホスピタリティ

新年のミーティング

長いあいだお休みを頂いていました。

にも関わらず、毎日訪問して下さる方が多くいて、びっくりしました。
ありがとうございます。

もう1月も終わりになりますね・・・。


「一期一会」
という文字をお正月の書き初めに書いた。

日本ではすでにありきたりの言葉で、
私が日本で、以前勤めていた銀行にも
この文字が標語として掲げてあった。

うちでも、従業員専用のトイレには、
この言葉と、その意味を説明したものを数年前から貼っている。

けれど、7年間、
レストランでサービスの仕事をさせてもらった後に、
今年、この文字を自分の心の深くから、湧きあがってくるものとして
新たに書くことのできることに、ひとつの実りを感じている。

この言葉のもつ深い意味が、
またひとつレベルを上げて、私を迎え入れてくれたような気がしているから。

私の書いた書き初めを スタッフに見せて、
「今年はますます、これでいきましょう」
と、新年のダイニングのスタッフミーティングで、話した。

こういうことを きちんと共有できるスタッフがいる、
ということもまた実りのひとつ。

価値を共有出来る人、
自分の真実を語ることの出来る人。
そういう人の集まるチームをずっと望んできた。

ミーティングはレストランの、植物に囲まれたパティオで行われた。
ダイニングマネージャー、
キッチンマネージャー、
6人のダイニングスタッフ、
そして私。

そこで、皆んなの顔を前にしていると、
それぞれの人の持つ美しさが、私の心に映し出されて、
胸がいっぱいになってしまった。

言いたいことは沢山あった。
ダイニングスタッフは殆どが20代なので、私から見れば、
お客様への気遣い、言葉かけ、掃除、
など細かいことが多々あるけれど、
結局、そういった小さいことは消えて、
ただ、ただ、皆んなに感謝の気持ちしか口にしたくない、
という強い欲求が込み上げてきた。
そういった言葉しか、彼女たちには相応しくない、という感覚。

でも、それではミーティングにならないので、
最後に 静かにそれらを伝えて、お願いした。

肝心なのは、たとえどんなことがあっても、
彼女たちのもつ本質的な美しさ・・・
それは若いゆえに簡単に、
当人が自信を失うこと、不安をもつこと、外的な現象などで
見えにくくさせるものだけど、
誰にも侵されることのない、自分の中の美しさを、
まっすぐに見つめられる目を 曇らせることのないよう・・・。

それぞれの本質的な美しさを 
どんなときにでもまっすぐに見ることのできるよう、
彼女たちには 強くあって欲しい。
そしてこの仕事場が、彼女たちにとって、
それを多く、思い出させる場であれば、と。

私はここで そんな時間を共有していきたいのだと、あらためて知った。

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庭で密やかに咲いていた、ローズマリーの小さな花。
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by S_Nalco | 2011-01-30 09:49 | ホスピタリティ

人を雇う

キッチンは別としても、
ウエイトレスの仕事はいわゆる腰掛で、
長くても3年から5年、と思っている。

学生時代のお小遣い稼ぎ、
子供が小さくて、フルタイムの社会復帰はまだ無理だけど、
とりあえずアルバイトをという主婦、
次のステップのためのお金を貯めるために、という人。

「何かのため」に、
とりあえずウエイトレスをするのが一般的な動機。

けれど、その腰掛期間の間にでも、
お客様をもてなす、というホスピタリティを学ぶことは
その人の人生に必ずプラスになると思っている。

そんな中、
これまで面接をしてきた人はかなりの数になる。

初めは、複雑な仕事ではないし、
誰にでもできると思ったので、
笑顔があって、
朗らかな人を採用していた。

仕事は教えれば誰でもできるけれど、
性格は変えられない、と。

けれど、実際のところどんなに人あたりが良くとも、
ウエイトレスが向いてない人、というのも存在することもわかった。

あと、他の従業員とうまくやっていけない人、
常識的なことへのラインが低い人。
学習意欲に乏しい人・・・。
自分の店に合った、
「人」を見つけ出すのはなかなかに難しい、
ということがわかった。

サービスは「独り言」
ホスピタリティは「対話」

そう書いているのは
ニューヨークのトップレストランの創業者、
ダニー・マイヤーで、
彼の「おもてなしの天才」ダイヤモンド社 
にはホスピタアリティの能力についての
「人のスキルにおける5つの核」を紹介している。

1 楽天的な温かさ・・・ 心からの親切心、思いやり、お客様の必要に「気づく」センス。

2 知性・・・ 頭がよいだけでなく、学ぶことそれ自体を目的に、学びに飽くことのない好奇心を抱く。

3 仕事に対するモラル・・・ 自分にでき得る最高の仕事をするという生来の傾向。

4 共感・・・ 「他人がどう感じるか」と「自分の行動が他人をどういう気分にさせるか」を意識し、気遣い、結びつけて考えること。

5 自覚と誠実さ・・・ 何が自分をその気にさせるかを理解し、正しいことを誠実に最善の判断のもとにおこなう責任をもつこと。

でも、これら、5つの核を、
一人の人がどの程度持っているのかを知るのが難しい。

うちでは、3ヶ月のトレーニング期間があり、
それから正式な採用にしている。

他の店では、ダメと思ったらどんどん辞めさせて、
新しい人を試すらしいけれど、
私はそれができない。

時間はかかっても、
性格の良い人ならば長い目で見て、
店に貢献してくれるというパターンが今までにあったし、
一度引き入れて、相手が諦めずに続けるなら、
こちらとしても面倒を見たい、という気持ちがある。
だから3ヶ月のトレーニング期間を何回も更新して、
辛抱強く指導したこともあった。

それでも、何ヶ月か後に、
「やっぱりだめだった」ということに
なるべくならないよう、
初めの面接に気を使う。

直感で、「OK!」と感じる人はもちろん話を進めるけれど、
「No」という場合にでも、
自分の直感に自身がもてなくて決断できなかったりする。

直感なので、根拠になる理由がない、というのは厄介だ。

一緒に面接するマネージャーはOKを出すのに、
私はYESと言えないとなると、おおいに困る。

けれど、そんなことを繰り返しながら、
自分の直感通り、
「NO」にしておけば良かった、
と後悔することが何度か続けてあった。

「No」であれ、
「YES」であれ、自分の直感を大切にすること。

それ以来、私は履歴書に日本語で小さく、
相手の第一印象、
面接の時の印象、
などを書きこむようにしている。
そうしていくうちに、自分のあらゆる直感が、
何を私に伝えようとしているかが 
もっと明確にわかるようになるのではないか、と思っている。


サービスは「独り言」
ホスピタリティは「対話」

この違いがほんとうにわかる人に
どんどん集まってきて欲しいと思う。
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by s_Nalco | 2010-12-21 18:01 | ホスピタリティ

サービス、それとも?

先日、レンタカーを借りた。

受付で車を借りる際に、
最初のガソリンをそこで買えば、
返す時にはガソリンは空でいいがどうするか、
という選択があった。
ガソリンは普通で買うよりもやや安い。

私は前回、レンタカーを借りたときには、
そこでガソリンは買わなかった。
というのも返すときに、
ガソリンをどのくらい使っているかどうかわからないからだ。

返すときにガソリンが半分ほどしか減ってなければ、
半分、私は余分にガソリン代を払いすぎたことになる。

けれど、今回はガソリンを車を借りた場所で買ってみた。

その会社の意図はどこにあるんだろう、とふと思ったから。

もちろんたいていの車は、
ガソリンが空になりそうなギリギリのラインで
運転していることはないと思う。
だから、車が戻ってきたときには、
いくらかのガソリンは残っていて、
その分会社は得をする。

けれど、もしお客がガソリンを初めにそこで買っていなくて、
満タンにして車を返さなければならない場合、
何パーセントかのお客さんは
それを忘れたりするのではないだろうか。

そして忘れていたために、
渡しておいたクレジットカードのインフォメーションから
ガソリン代が引き落とされ、
それが お客さんとのトラブルのもとになるとしたら?

それを防ぐためなら、
あらかじめガソリンを買ってもらって、
返すときにはガソリンの心配はしなくていい、
という設定のほうがシンプルだ。

そして、それはレンタカー会社にとっても、
お客にとっても、便利なシステムだな、と思った。


というのも、先日、
サンフランシスコのホテルに泊まったとき、
朝はゆっくり眠るつもりでいた。

それなのに、
午前8時半にけたたましいノックの音で起こされた。

それは清掃の人で、
私たちが“プライベート”と書かれたタグを
ドアノブに表示していなかったせいで、
彼女は私たちが不在なのだと思ったらしい・・・。

他のホテルよりもずっと小さくて、
エレガントなそのタグを 
掛け忘れていたのは、こちらの落ち度でも、
チェックアウトは12時で、
それまで私たちはゆっくりとこの部屋を使うことができるはず。

なるべく早く清掃を済ましてしまいたい、
というのはホテル側の都合だけじゃないのかと思った。


同じことが日本の旅館でもあった。

子供達に旅館体験をさせてやりたくて行ったのだけど
朝、何度か布団を上げるタイミングを見に来られて落ち着かなかった。
(そういえば旅館には“タグ”がない!)

料理は事前に伝えておいたにも関わらず、
9歳の子供と大人の食事の量が同じ。
決して小食ではない私でも、
半分しか食べられないほどのボリュームで、
ご馳走を無駄にしてしまったことに後味が悪かった。
(金額は同じでもいいので、量は少なくして欲しい。)

しかも、子供の前にも、
お酒のグラスが添えてあるのはどういうことなのか、
何だかワケが分からなかった(笑)。

いきとどいたサービスは、お客さんの邪魔にならないはず。
けれど、どこか押しつけがましかったり、
型にはまって臨機応変にできなかったり、
お店の都合だけで事が流れていると、こちらは重くなる。

便利で、お得な商品がどんどん開発されるように、
サービスも、日々見直しながら、進化していくものだと
こんな日常からも伺える。
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by s_nalco | 2010-12-11 19:39 | ホスピタリティ

報酬とは

先週来られたお客様で、
食事が出てくるのが遅く、
こちらのサービスに不満のあったグループがあった。

5人家族のグループで、
16歳の息子さんの誕生日だったそうだ。

ありがたいことにその家族は、
彼らの不満を 
テーブルに設置してあるコメントカードに書いて、
電話番号も置いてくれていた。

見てみると、
30分離れた町からわざわざ来てくれている。

夜も遅かったので、
翌日にマネージャーが電話して不手際を謝った。
お食事券を送りたいので住所を知らせて欲しいことを告げると、
相手は、
こちらの不手際に関しては
仕方のないことで、理解できる範囲であること、
そして、こちらが電話をしてきたというだけで、
誠意がわかって嬉しい、
ありがとう、とお礼を言ってくれたという。

このことを聞いて私は、
涙が出るくらい有難かった。
このように店というのは
お客様から教育して頂けるのだ、ということを思った。

どれだけの人が店のコメントカードに、
匿名ではない不満のコメントを書き、
電話番号まで残してくれるだろう?

たいていの人は、
気に入らなければもう2度と来なければいいのだ、
と、そのお店のことはそれ以上は考えないと思う。

また、電話番号まで書いたコメントカードを残すことで
店から見返りを期待している、
と思われるのではないかと、
杞憂するお客様もいる。

マネージャーは何とか先の相手の住所を 
電話で聞き出してくれたので、
私は彼らが今回食事に使った金額に上乗せしたものを 
お食事券で送るようにした。

報酬というのは 
お客様が喜んでくれたことでこちらが頂けるものなので、
喜んでもらえなかった場合はお金は頂けない。

初めの頃はそこまで思いきる勇気がこちらになかったし、
そこまでしなければならないというアイデアも、
私のほうで育ってはいなかった。

けれどある夜に、
一人のお客様がうどん出しについて不満を漏らされて、
その対応に困ったウエイトレスが私に聞いてきた。
もう何年も前になるので、
どういう理由だったのかは忘れたけれど、
こちらに不備はなかったことは覚えている。
それでも、私が
「じゃ、お勘定はいいわよ」と笑顔で対応したことで、
店の雰囲気がぱっと変わって、
スタッフの士気が上がったのがわかった。

私のその判断で、
「喜んでくれたお客様から、お金を頂く」
という店の在り方が
働く人の誇りにもなったのだと思う。

随分前に日本で
小さなイタリアンレストランに友人と行ったことがあった。
けれど50分待っても食事はいっこうに出てこないまま、
私たちは店を出なければならない時間になった。
キャンセルしてください、と店の人に言うと、
もう作り始めているので、
キャンセルしても代金は頂くことになります、
と言われた。
仕方なく、私たちは安くはない食事代の全額を払って、
お腹をすかせて店を出たことを覚えている。
私は若かったので、
それが店としての適切な対応だったのかどうかは
その時の私には判断できなかった。

でも、店を持った今なら、
それがとんでもない応対だったことがわかる。
「店の都合」
だけを優先してしまっていることはないか、
店を見回して、日々、それを考え続けていくことが、
私の仕事のひとつでもある。
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by S_Nalco | 2010-11-29 15:44 | ホスピタリティ

Walking Angel

実は私は夜更かしが大好き。
末の娘が一年間、日本の中学に留学しているのを機に、今年は思い切り夜型人間で暮らす幸せを満喫している。
けれど夜型がたたっているのか、運動不足が原因なのか、このところ疲労感が抜けなかった。
肉体的にエネルギー補充が必要なときには私は時間を見つけてカフェに入る。

そこでMADE IN AMERICA ならではの巨大なマフィンとホットコーヒーを頼んでほんの少しの時間でも好きな雑誌を読みながらくつろぐことにしている。
普段はデザートには興味がない分、こういうときの甘いお菓子ってほんとに効く。

カフェに入る時間もなければお店にあるコーラをぐいぐい飲むけど、それではあまりにもすさんだ生活の象徴みたいになってしまうので(?)私はあえてカフェに入るわけだけど、この町にある2軒のカフェって実はあんまりサービスが良くない。
スターバックスはうちの店からは遠いのです)。

もう何年も前になる。

クリスマスの時期に、サンフランシスコに行った帰り道、私はある町のガソリンスタンドに併設されている小さなマーケットに寄った。
ガソリンを入れるためと、コーヒーを調達するためだったけれど、店内は人でいっぱいだったし、夜も更けていたからか、店員はいかにも面倒くさそうに応対していた。

私は列の後ろから、店員の機嫌の悪そうな表情を見てうんざりした。
私はとても疲労していたのでひょっとすると、その店員と同じような表情をしていたかもしれない。
店内は私のその時の気持ちと同じように、どんよりと重かったのを覚えている。

ちょうど私の前にいた、若い女性がレジで払う番になったとき、
彼女はびっくりするくらい気持ちのよい、明るい声で店員に声をかけた。

「HOW ARE YOU!?」

その素敵な声と笑顔に店員がまるで目覚めたかのように、はっとなったのを私は見た。
彼女は本当に親しみのこもった笑顔で店員に話しかけた。
そしてはじめはぎこちない笑顔で応えていた店員も、最後には自然な笑顔で丁寧に彼女にお釣りを渡した。

私は彼女がお釣りを受け取り、私の目の前を通りすぎて店を出ていくのを見守った。
店の空気は、すでに彼女の朗らかさに同調していた。

そして、私が中年の女店員の前に立ったときには、彼女はずっとそうしていたかのように柔らかい笑顔を私に向けてくれたのだった。

「相手の心ない対応に対して自分が同じように返せば、自分も相手と同じレベルにいるというにすぎない。
そのあなたの反応いかんで、あなたの住む世界は決まるのです。」
と書いてある本があった。
どんな状況であろうとも、自分がどんな態度に出るかどうかは自分次第なのである、ということを私は思い出した。

私は、自分も常に彼女のようでいたいと思った。
善意のあるところで笑顔でいるのは誰にでもできる。でもそうでないところでこそ、笑顔が大切なのだということを改めて思い、その小さな行為がどんなにこの世界を住みやすくするかを思った。

今でも私は彼女のことを、クリスマス前に、ちょっと地上に降りて来ていた天使だったと信じている。
彼女のお陰で、私はレジの前に立つと、自分から声を掛けるようになったし、何よりもいいのは、どんな対応にあっても、自分のキャパシティを試されてるんだとチャレンジ精神が旺盛になったこと(笑)。
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by S_Nalco | 2010-11-21 19:17 | ホスピタリティ

タイミング

以前に来て下さったお客様で、その時の自分の対応が、後で振り返ってみて満足できないことがある。
「もっとこうしてあげれば良かった」とか、
忙しくて片手間な対応しかできなかったとか、
色んなことを思う。

それがある日再びそのお客様が来られて、
私のほうでも時間があって、
しっかりコミュニケーションが取れたりして、
前回での自分のふがいなさの感じを解消できたり、
そのお客様と何かしらの繋がりが構築できた喜びがもたらされることがある。

例えば以前に、お客様が、おスシに天ぷらの天つゆが欲しいと言われたのに
私がなかなかそれに気づいてあげられなかったことがあった。

つい先日、テイクアウトの店にいた時にたまたまそのお客様が現れた。
いつもの彼女のお気に入りのおスシを持って、レジに来るよりも早く私は彼女に声をかけた。

「テンプラソース、ですよね?すぐにお持ちしますよ!」

そう言って、私はレストランに走って取りに行った。
前回はあんなに手間取ったぶん、今回はすぐに彼女が欲しいものを渡すことができた。
もちろん彼女はとても喜んでくれた。

こんなふうに、自分の不手際のフォローアップを、「タイミング」というツールを使って、宇宙は私を手助けしてくれていると、いつも思う。
その一瞬のタイミングをどう使えるか、どう演出できるかは私次第ではあるけど、
これもまた、目には見えない宇宙からのサイン。

それを見逃さないためにも、私はたいてい誰かに会うと、
その人にお礼を言うべきこと、謝ることがなかったかどうかをまず考える。 
  
さんざん人にお世話になりながら、ここまできているので私にはお礼を言うべき人がたくさんいる。
だから何もなくとも何となく、いつも誰彼に「ありがとう」と言いたい気持ちで店に立っている。                       
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by S_Nalco | 2010-11-19 19:27 | ホスピタリティ

サービス精神

サンフランシスコに数ある日系企業。
レストランに必要な味噌、醤油、海苔など日本の食材はそこから仕入れる。
けれど、私の町はサンフランシスコから車で2時間半離れているので、配達してくれるのはたった1軒の会社だけ。

それでもオープン当時からの担当の方が、誠意をもって取引をしてくれるので本当にありがたい。

私は日本で商売をしたことがないので知らないけれど、
こちらでの会社の対応にはびっくりさせられることが多い。
例えば、注文しておいたものが品切れで届かない、というのは配達されるまでわからない。
相手のミスで、届かないにしても、「では次回の配達に」と、それだけ。

これが先の日系企業なら、品切れの場合、配達の事前に連絡があって代替えのものを提案してくれる。
相手のミスで届かない場合には、担当の人が2時間半かけて、店まで届けてくれるか、郵送してくれる。

日本人のサービスってすごいな、とつくづく思う。

1時間離れた野菜を売る会社は、週3で配達に来てくれていたけれど、この近辺の取引先が減って、ここまで配達に来たくないので、来週から配達をやめます、と電話があったときにはびっくりした。
そんな突然宣告されても、急には無理。
電話してどうにか1週間だけ待ってもらえることになった。
毎年クリスマスが近くなると、会社のカレンダーや、チョコレートを届けてくれることよりも、もっと違うことに気を使ってほしいな、と苦笑するしかなかった。

「田舎だから」
とくくってしまえば簡単だけど、競走相手が少ない分、いわゆる殿様商売が多いのだろうか? 
町でも、大きなデパートよりもローカルで買い物をしましょう、と呼びかけてはいても、
古くからある地元の店は対応が悪くて、
「行きたくないわよ」とこっそり教えてくれる友人もいる。

同じ商店街のメンバーとしてはとても残念。

かく言う私も、スターバックスのコーヒーが大好き。
ドライブ・スルーで窓口から顔を出す若い子たちの お約束の元気な笑顔がコーヒーよりも効いている。
町に3軒あるこのコーヒー屋はどこもいい。
きちんとスタッフの教育が行きとどいているんだな、と未来が明るくなる。
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by S_nalco | 2010-11-11 18:31 | ホスピタリティ

ビジネスホテルと大浴場

さて、日本に戻った時の一番の楽しみは本屋ですが、第2の楽しみ、
月並みでも、温泉。

でも別に温泉でなくても、大きなお風呂であれば大衆浴場だってOK。
アメリカに暮らしていると、たっぷりした大きな湯船に浸かれるだけで幸せなのです。

この1年、今回もあわせると4度も日本へ行くことがあって、ホテルや旅館へ泊ることも何度かあった。
今回書きたいのは、大浴場つきビジネスホテル。

2、3か所、行ってみたけれど、いずれもスーツケースの置き場にも困るほど、びっくりするくらい小さい部屋に 大浴場 という組み合わせ。
ようするに、部屋の小ささを大きなお風呂でカバーしている。

小さい部屋なので、必要なものがすべて手に届く範囲でそろっているのは結構便利(動かなくていいから?)。
枕元に電気のスイッチ、時計。ベッド脇に鏡とドライヤー、下に冷蔵庫。壁には6,7個のハンガー。
アメニティもたっぷり。
浴衣もついて、夜も朝もたっぷりお風呂を満喫して、結果、私は大満足だった。

部屋が小さい分集客出来れば大浴場も無駄じゃない。
値段は5000円から5500円。
この金額で簡単な朝食がついているところもあれば、
なかには1000円プラスで朝食バイキングのホテルもあった。
さすがにビジネスマンのお父様方が、ご自分でごはんをよそう姿を見るのは心苦しい。
けれど、朝から手作り豆腐や(京都市内のホテルでした) 食べきれない程の豊富なお惣菜の品ぞろえは、一日の始まりを心身ともに元気にさせてくれた。


うちの店の取引先のワイン会社は年に一度、テイスティングのパーティを開く。
ダイニングマネージャーのスティーブに行ってもらうのだが、車で1時間半かかる海辺のホテルで催されるものだから、たいてい1泊してきてもらう。

「海の見える、ジャグジー付きの部屋があるわよ!」

私がスティーブに興奮して言うと、

「僕はお風呂には興味はないんだよ」、と、あっさりしたもの。
ちょっと淋しい。

でも、と私はつくづく思う。

小さな小さなホテルの部屋でも、大きなお風呂があれば、バルコニーから海辺が見える、大きなお部屋よりいいかもしれないなあ、と。

私はホスピタリティに興味があるので、ホテルに行くのも大好き。
サンフランシスコのリッツ・カールトン・ホテルへも滞在したことがある。

けれど、日本のビジネスホテル、体験してみると面白い。
無駄なものをそぎ落として最低の必要だけにフォーカスしている。
だから機能的で、安い。

こういうのも、ある意味ニーズに合わせたおもてなし、と思う。
もちろん玄関である、フロントの対応がプロフェッショナルで 気持ちいいのは言うまでもないです。
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やっぱり私が行きました。海の見える、ゆったりしたジャグジー!
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by S_Nalco | 2010-10-26 17:05 | ホスピタリティ

単純作業に祈りをこめる。

開店前に、ナプキンをテーブルにセットしてお箸を置く。

今ではウエイトレスの仕事よりも他のことをやっているので、そんな機会もないけれど、私はお客様を迎える前のその、作業がとても好きだった。

開店前に一席ずつ、心を静めて「ありがとう」と静かに言いながら、お箸を置いていく。
今日、ここに座って食べて下さる人のために、この場を整えていく、という意味で。

うちのスタッフは皆んな仲良しなので、楽しいお喋りも飛び交うけれど、こういうことも大切だよ、と話していく。

「単純作業に祈りを込める」

この言葉を見つけたのはどの本でだっただろう?

単純作業だからこそ、おろそかにせず、祈りを込めて店の波動を整え、お客様をお迎えする準備をする。
そういうことが私は大好きだから、お花を飾ったり、掃除したりすることの意味もそこから話す。

掃除をすることは、自分の心を掃除すること。
日本では、妊娠中にトイレの掃除をすると、綺麗な子が生まれると言われているのよ、と言うと20代の女の子たちは興味深そうに聞いている。

開店前、パティオの小さなエンジェルの前のキャンドルに火を灯して、少しのあいだ目を閉じているスタッフを見ると、私までもほっとする。

こういう人たちが働いてくれていることに、本当に感謝している。
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by s_nalco | 2010-10-05 16:46 | ホスピタリティ