カテゴリ:テイクアウト店( 3 )

テイクアウト店のオープン 3

2007年2月、テイクアウト店をオープンした日は雨だった。

何人かの、お花を持って来てくれた、レストランの常連のお客様の顔を今でもよく覚えている。

派手にグランドオープニングを宣伝すると、忙しくなって大変なことになるのはレストランのときに十分経験したので、それだけは避けたかった。
その思いが強すぎたのか、雨が降って、人通りもいつもより少ない寒い2月のおわりだった。

それが一週間も過ぎると、人が集まるようになり、予想以上の売り上げを出せるようになった。
やることの多いレストランに比べて、こちらはレストランで作ったものを置いて売るだけ、というシンプルさ。人が一人いれば事足りる。
早くて、安くて、それに健康的なごはん。
お昼休みがたっぷり取れないお客さまにとっても、あらかじめ作ってあるおスシや丼ものをすぐに買って帰ることのできるシステムはとても喜ばれた。
また、仕事で忙しくて、今日の晩御飯はこれね、と言って買って帰られる主婦もいる。

来て下さるお客様はどんどん増えて、一日のディナーと同じだけの売上を、
やはり一日で出せるようになった。

テイクアウト店をオープンしたことで私たちが受けたプロフィットはまだあった。

テイクアウト店に置くためのフードを作り続けることで、レストランが暇なときにでも、スタッフが常に動いているということ。

レストランでオーダーミスが出ても、すぐにパックに詰めて、テイクアウト店で出すことが出来る。

レストラン、テイクアウト店の両方でおスシの売上を上げることで、よりフレッシュな食材をまわすことができる。

ランチタイムにレストランが一杯で席の空きがないとき、良かったらテイクアウト店へどうぞ、と声をかけることができる。(これは「席が空いてません」の一言よりもずっといい感じで受け取られる)

さまざまなことにおいて、効率化、無駄の排除、というものが成された。
テイクアウト店の存在が、レストランの裏側をも強くし、経済的にも、助けることになった。

レストランは、お客様にゆっくりとくつろぎ、食事を楽しんでもらう、空間。
テイクアウト店は、スピーディ、便利さ、というお客様の時間の節約に一役かっている。

ところでこの二つの場所は一軒の洋服屋を挟んでいるだけなのだが、
お客様の中には
「繁盛してるスシレストランの横に、こんなテイクアウトの店を作るなんて、勇気あるね」
「ライバルのすぐそばに店出して、すごいね」
なんて言う人がけっこういた。
二つの店名は似通っているし、看板も一目で姉妹店と分かるほどなのに、
この町の人は根っからの天然なのだろうか?
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by S_nalco | 2010-11-10 16:20 | テイクアウト店

テイクアウト店のオープン 2

テイクアウトのお店でははじめ、レストランのテーブルを待ってもらうお客様のためのウエイティングスペースと、待ってもらう間にお酒やワインを出すことも考えていた。

それまでレストランでテーブルが空くのを待ちたい、というお客様や、予約をしておいても、前のお客様がまだいらっしゃる場合などに、近所のレストラン・バーももっているビール醸造所へ案内していた。
そこでビールやワインを飲みながら、待ってもらう。

うちは小さな店なのでお客様に少しでも待ってもらうような場所がない、
というのはとても不便を感じていたので、テイクアウト兼、ウエイティング・ルームというアイデアだったのだ。

けれど、アルコールライセンスを取ることが出来なくて、結局ウエイティング・スペースというよりもフードのテイクアウトがメインの場所に仕上がった。

不思議なもので、あの頃はその場所がお客様がテーブルを待ちながらでも、楽しく過ごせるようなスペースを作りたいと、スタッフともイメージを膨らませてわくわくしていたのに、いったんテイクアウトの店が出来てしまえば 初めからそのアイデアしかなかったような気になっている。

これまでにも、数多くのアイデアが、プランがあった。
「これをやりたい!」
わくわくして、そのイメージを実現させようとする過程で、様々な障害が起こってくる。
それは市役所からの許可が下りなかったり、必要なライセンスがとれなかったり、金銭的なことだったりする。

初めの障害に直面すると、私たちはまず、それは「確認」のメッセージだと受け取る。
本当にそれをやりたいのか、やり遂げる覚悟があるのか。

2度目の障害が来たときには、それは今が時期ではないのか、他にやるべきことがあるのではないか、と立ち止まる。
どんどん進んでいきたい欲求を抑えて、謙虚に考えてみる。

人には「目的型」と「展開型」があるという。

手帳に 自分の目的の達成のための全てのプランと達成する日付を書いて、それを実現する「目的型」。
ひとつひとつ、目の前のことを仕上げていくごとに、次の展開がつぎつぎと現れてくる「展開型」。

私達も手帳にプランや日付を書いたことはあっても、その通りになったためしはない。
ずっと先だと思っていたことが、随分早くに達成できたり、とっくに達成できているはずのことが、まだだったりする。

自分がどの「型」なのか、どういう勝ちパターンが今までに多いのか、そういうことがわかっていることは、ずいぶん道しるべになる。

どうしても自分がやりたい、と思っていることは、諦めなければ必ず最後には出来る。
このレストランだって、出来上がるまでに2年かかった。
野菜を収穫するのに時期があるように、花が咲くのを早めさせたりすることは、私にはできない。
けれど 水と陽射しさえあれば、必ず花は咲くから
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紅葉の真盛り、
ダウンタウンの風景。
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by S_nalco | 2010-11-07 13:24 | テイクアウト店

テイクアウト店のオープン 1

レストランをオープンしてから3年目の終わりにテイクアウトのお店を開いた。

おスシやサラダ、丼ぶり、飲み物の冷蔵庫と、日本のお菓子、食器などを置いた棚が3つ、その場ですぐに食べたい人のために3、4つのテーブルがある小さな店。

11テーブルと、カウンター席しかないレストランの席数を増やすようにとお客さんからのリクエストは多かったけれど、私たちはその気になれなかった。

レストランは有難いことに、繁盛店と呼んでもらえるようにはなっていたけれど、内情は毎月お金をまわしていくだけで精いっぱいだった。
入ってくるものも多いけれど、出ていくものも、同じくらい多かった。

店が忙しくなれば、人手を増やさなければ追いつかない。従業員が増えると、給料に伴う税金と、保険が大きかった。
小さな支出が幾つも積み重なり、「シンプル」に生きてきたこれまでのライフスタイルとはかけ離れた、絡みあうような状況が、毎月の損益表の向こうに透けて見えた。それは数字だけでなく、自分の心の反映でもあった。

おとなりの洋服屋さんのシンプルなビジネスが羨ましく見えていたのは、この頃だったと思う。

テイクアウト店を開くことにした大きな理由は、レストランではお持ち帰りのお客様に対応できない状況が多かったこと。
そしてテイクアウト店をレストランから二軒隣りにオープンすることで、テーブル待ちのお客様にそこで待ってもらえる、ウエィティング・ルームも兼ねようと計画していた。

私自身の隠れた動機としては、実はもうひとつあった。

レストランをオープンすれば、いつでも自分の子供たちに美味しい日本食を手軽に食べさせてやることが出来る、と思っていたのに あてが外れていた。
小さな店内はすぐに一杯になるので、お客様に申し訳なくて、自分たちが休みの日にでも、食事に行くのをためらうことが多かった。

もし、テイクアウトの店ができれば、今度こそ、子供たちがいつでも来ることができる。
そして町のお母さんや子供が、手軽に、「ファースト・ヘルシー・フード」を買うことのできる場所にしたい、というのが私の本当の願いだった。

子供達がまだ小さかった時、
あの頃の私が欲しかったもの・・・。
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by S_Nalco | 2010-11-02 16:55 | テイクアウト店