カテゴリ:成長( 17 )

3年目 Ⅰ

ビルの購入

レストランを始めて3年目に思いがけず、 その平屋建てのビルディングを購入する機会に恵まれた。

ことの始まりは、私たちが おスシのテイクアウト、日本の雑貨、お菓子などを扱うミニマートを レストランから一軒隔てた、同じビル内にオープンする計画を立てたこと。ちょうど当時入っていた雑貨屋が店をたたむというので、そのあとに入りたいと大家さんに伝えたことからだった。
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大家さんは光の全く射さなかった場所に 今は週末には予約がないと入れないくらいのお店に仕上げた夫にとても敬意を示してくれていた。そして彼は私たちにこう勧めてくれた。

「新しいお店もまた自分たちで改装しなければならないだろう、もうこれ以上お金を使うのはやめて、投資にしたほうがいいよ」

そう言って、レストランを含め、3軒の物件が入ったそのビルディングを 銀行を通さずに、 しかも良心的な金利で直接売ってくれることを申し出てくれたのだ。 
5年間(うち、2年は改装していた)月々の支払を遅れることなく、しかも開店してからは1週間は早めに払うように心がけていたのも功を成した。
大家さんが私たちを信頼してくれ、しかも私たちのビジネスを心から応援してくれる気持ちでいることがわかって、それだけでもありがたかった。

けれど大家さんの提示した500万円という頭金を私たちは払うことができなかった。少しは蓄えもあったけれど、従業員も増えていた当時、まとまったキャッシュはいつも用意しておきたい。

ビジネスには3つの坂があると本に書いてあった。
登り坂、下り坂、そして「まさか」。
そのまさかに備えて守るべきものを守れる体制にしておかなければならない。

でもこれほどいい話があるだろうか。
こののビルディングを購入することは私たちの遠い目標ではあったけれど、その機会がこんなに早く訪れるとは考えてもみなかった。このチャンスを逃してはならないと思った。

するとスティーブが興味深い情報を持ってきてくれた。
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by s_nalco | 2010-09-21 18:21 | 成長

3年目 Ⅱ


“サークル・レンディング”(Circle Lending)

銀行ではなく、親しい友人や家族といった仲間うちでのお金の貸借をそう呼び、またそれをスムーズに法的にセット・アップしてくれる会社があるらしい。

「レストランにもファンがついてくれているし、良さそうな人に声をかけてみたらどうだろう」とスティーブ。

この方法には双方にメリットがある。貸すほうも、借りるほうも、ともに銀行でするよりもずっと良い利率で貸し借りできるということ。
しかも借りるほうが私たちのようにビジネスのためなら、貸してくれる人たちも このビジネスに参加しているという連帯意識が芽生えてくる。

それは私たちにとっても2次的ではあるけれど、大きな利益だ。
自分がお金を貸しているレストランがうまくいって欲しいと願うのは当たり前のことで、私たちはお金を借りて、しかもその上に強力なサポーターを得ることになる。
応援してくれる人が増えれば増えるほど、店は益々豊かになる。

私はさっそくサークル・レンディングの会社をネットで調べて、資料を送ってもらった。
メールで何回か質問したあと、これならばその会社に頼むまでもなく自分たちで出来ると思った。
何故なら会社に頼んで計算してもらう金利や返済プラン、その他については、店で毎月の消費税の申告と税金関係を頼んでいる会計士が無料で引き受けてくれたし、証明書を作ってくれる弁護士もお客さんに当てがあった。
弁護士には相談料と、証明書の製作費を払ったけれど、遠くの知らない会社に頼むよりも、常連のお客さんにお金を払うほうがコミュニティのためにもなる。
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by s_nalco | 2010-09-21 18:20 | 成長

3年目 Ⅲ

プレゼンテーション

私たちは資料を用意して、プレゼンテーションの準備をした。
集まったのは20数名。司会はオープン当初から何かとお世話になっているジョン。
店を始める前に 初めて友人の紹介で彼に会ったとき、広島出身の、私たちの作るお店のビジョンに共感してくれて、それ以来ずっと応援してくれている。

さて“グレート・スピーカ”を名乗るジョンの司会で始まり、店の料理と地元のワインをふるまい、私たちの計画をスティーブが説明し始めた。

ビルのオーナー、会計士、弁護士も来てくれて、私たちが信頼に値すると言葉を添えてくれたのはとても有難かった。

地元でワイナリーを経営している夫婦は、以前二人でレストランを経営していた苦節の時代の頃のことを話してくれた。そして「このケースより、もっといい金利でお金を預かってくれる銀行もあるわよ」と言う人に、「金利とか、自分たちにどんな利益があるかではなくて、純粋にただこのお店を応援しましょうよ」と打ち合わせたわけでもないのに その場を盛り上げてくれた。

結果、1人と9組のカップルが声をあげてくれて、それぞれ50万円、合計500万円の頭金を用意することができた。
支払は当時の銀行ローンが終わる5年後から、と長いお付き合いをしてくれるつもりなのが嬉しい。
以来、毎年一度は彼らをパーティに招待して感謝の気持ちを伝えている。
しかも彼らは店の常連さんでもあるので毎年払う金利は店の食事券で、という人も半数はいて、限りない感謝は続く。
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by s_nalco | 2010-09-21 18:19 | 成長

3年目 Ⅳ 

動機

そのときのことは 5年たった今でも忘れられない。
プレゼンテーションの前の晩遅くまで ミニマートになる予定の場所をパーティ会場に様変わりさせていた。使うはずだったテーブルクロスが傷んでいたので夫と二人で夜遅くに近所のウォルマートまで買いに行ったんだった。

ほんとうにこの計画が成就するのかどうか、未知への期待でいっぱいだった。けれど、ナポレオン・ヒル プログラムの中にある、「他人の財産を活用する」という章をタイミング良く読んた後だっただけに すごくわくわくしていた。もちろんこのわくわく、の中には思いっきり どきどき、もあった。

実はこのパーティにあたって、私がひとつだけ自分で考えていたことがあった。それは来てくれた人に、私たちの真実を話す、ということだった。それはこのレストランを始める時、その動機となった夫の気持ち。私が家族で一緒に夕食を囲みたいから、レストランを始めるのは嫌だ、と言ったにも関わらず、「来てくれる人、皆んなが家族と思えばいい」と答えた彼の言葉こそが、始まりだったこと。それが私たちのこのビジネスの真実だと思っている。

もし、この真実がただ単に、お金儲けのために、だけだったら、こんなにも誰かが協力してくれただろうか。

それまで誰にもこのことを話したことはなかったけれど、それは見えないけれど確実に、ずっと店とともに在り続けている。そしてこれからも店を引っ張っていくだろう。

パーティが終わった後、私は、ジョンに思いっきりハグしてお礼を言った。
彼は私に、
「Nalcoの最後のあのスピーチが全てを決めたんだよ、皆んなの心に入っていったよ、おめでとう」
そう言ってくれた。

人々の信頼と善意、それらが現実に 私たちへの融資となって現れたこと、それを直接体験できたことが私には大きな幸福だった。
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私はこのメンバーに 「GOEN(ご縁)グループ」という名を付けて、以来お付き合いさせて頂いている。メンバーの一人のリサは新規のお客様を連れてたびたび店に来てくれる。そしていつもワインのツマミに話すのはこのときのことだ。「彼らはたった二時間のうちに 店のスシとワインでもてなしながら500万円を手に入れたのよ!」

また店の伝説ができたようだった。
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by s_nalco | 2010-09-21 18:18 | 成長

4年目Ⅰ

テイクアウトの店を開いた年、レストランを開いてから4年目には全体の売上が1億円を超えた。
出かけるときは子供のおむつでぱんぱんだった私のバックが お店にとって必要な書類にとって代わってこの数年間。店は確実に自身のキャパシティを広げていた。

アメリカに暮らすのは そろそろ日本にいた年数を超えるというのに、いまだドルに対しての感覚が円よりも希薄だと思わずにいられない。
日本に行くと2千円の出費に 注意深くても 20ドル札にはそこまでではない。
売上にゼロがたくさんついても今一つピンとこなかったものが、改めて考えてみると、これって日本でいう1億円?!とある日気がついてびっくりした。
その感覚がアメリカでのビスネスにプラスになっているのかどうか。

それでも、1億円と知ったとき、なるほど、と思ったのは、私はこれまでに日本円で1億円という現金を毎日見ていた時期があったから。

高校を卒業して私はすぐに地元にある銀行に入行したが、その間の2年間、1日の終わりには1億円相当が出納係の机の上に積まれていた。
けれど見た目にはそれほどでもなかったので、不遜にも「なあんだ、一億円って、こんだけ?」という気持ちで眺めていたのを思い出す。

目に刻まれた記憶というのを私は信じていて、その光景は必要とあれば現実化するのは、その記憶がないよりもずっと簡単なのではないかと思っていた。だから成功法則を書いた本ではよく、自分の欲しいものを写した写真を貼っていつも眺めるように、と進めている。

先日、YOUTUBE で「見ると勝手にお金持ちになってしまう映像」を見つけた。お金をとても丁寧に、様々な角度で写し、お金への愛情を感じさせる映像と バックグラウンドミュージックが心を和ませてくれる。こんなふうにお金を見つめる視点があるのはいいと思った。

銀行にいた2年間は 興味のもてない仕事をしていたため、自分に嘘をつき続けていた時期だった。 それにも関わらず、今はその時に得た、事務処理のノウハウに感謝している。もちろん日々の1億円との対面にも!
無駄な体験というものは存在しないと あの頃のことを思い出すたびに納得している。

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by S_Nalco | 2010-09-21 18:17 | 成長

4年目 Ⅱ


売上が1億円になったからと言って、そのぶん入ってくるものが多くなったかと言うと、そうでもない。
毎日お客さんが店に入りきれないくらい来てくれて、店の活気が素晴らしくいい。
スティーブの鼻歌も調子いい。
けれどやっていることが大きくなればなるだけ、物事はシンプルさから離れていき、従業員も増えるし、それにあわせて諸経費も高くなり、管理しきれないものが出てくる。システムが店の発展に追い付いていかない。というわけで、世の中に循環させるお金が1億円になった分、貢献度は上がったかもしれないが、残るものはそうさしてかわっていないというのは 会社としての勉強不足だと言わざるを得ない。銀行通帳に記載された多額の数字が 支払と給料を終えた月末にはちんまりしているのが笑いさえ誘う。いったい私は何をしているんだろう?ボランティアか?

それでも税理士や、ビジネスコンサルタントという人たちは 「レストランでこれだけ出来れば大したものよ」と賛辞をくれる、というのも謎。素人の私たちが短期間でここまで来れた、という励ましの意味もあると思うけれど、いったいレストランビジネスって何なんだろう。
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by s_nalco | 2010-09-21 18:16 | 成長

4年目 Ⅲ


レストランのお隣はブランド品や、セレクトされたセカンドハンドの洋服屋。
お客さんが仕入れも購入もしてくれる、というシステムで、従業員もいないし、しかも在庫の洋服は腐らない!
子育てを終えた陽気な女性がひとりで営んで、毎年2回は店を閉めて旅行に出かけるし、店の前に椅子を出して小説を読みふけっている彼女の優雅な姿を見ると ああ、なんていいビジネスしてるんだろう、と横目で見ている自分がいた。

けれど自分で商売をしているとはいえど、聞いてみると毎月のプロフィットというのは副業範囲でしかないことがわかった。それに客観的に見てみれば、うちの店のほうが断然お客さまの笑顔が多い。
貢献度が違うのだ。
それが、気に入れば何回でもリピートできるレストランビジネスのいいところ。
服は一度買えば、何年も着るけれど、人は食べても食べてもお腹が空くものだから。
お客様が喜んだ回数の多さで店の売上は決まってくる。
そして、と思う。
そして、次は働いてくれる人が益々ここで働くことに誇りを持てるように、就労環境をグレードアップしていきたい。店の外からも、内からも溢れる笑顔で満たしていきたい。

そんな頃、私はとある町の韓国人が経営する、アジアンマーケットで湯呑を見つけた。それには「商売十訓」が書いてあった。

一、損得より先に善悪を考えよう
一、創意を尊びつつ、良いことは真似よう
一、お客に有利な商いを毎日続けよう
一、愛と真実で適正利潤を確保せよ
一、欠損は社会の為にも不善と悟れ
一、お互いに知恵と力を合せて働け
一、店の発展を社会の幸福と信ぜよ
一、公正で公平な社会的活動を行え
一、文化のために経営を合理化せよ
一、正しく生きる商人に誇りを持て

かっこいい!
ミーハーのように飛びついて買って、夫へのお土産にした。後日、湯呑を見た知人が 言う。
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「神様経営だね、これって」。
そういえば、経営の神様と呼ばれる松下幸之助さんも沢山の著書の中で、総じて言えばこういうことを言われていたな、と思い出した。
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by s_nalco | 2010-09-21 18:14 | 成長