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3つめの答え

レストランも10年近くやっていると、
その時その時の決断がずい分やりやすくなった。

これまでの経験値があるので、
どうすればいいのか頭の引き出しからいろんなものが出てきて、
掛け合わせて答えが出てくる。
ちょうど、冷蔵庫の中を見て、
そこにあるものでちょっと洒落たディナーが出来上がるような・・・。

何でも長く続けるというのはこういうことなのかと思う。

けれど、同時に
いつも新しい可能性にも心をオープンにしておくのはとても大事なこと。
それなしには面白さも発展もなくなってしまう。

これまでの経験では「1」と応えていたものを 
あえて「2」にしてみて、
新しい「3」という解答を自分の引き出しに入れてみる。
「人」相手の商売では、
沢山の引き出しと柔軟性で対処した、
小さな結果の積み重ねが
長い目でみたときに成果を生んでくれる。



ところで先日、若い男性が履歴書を持って現れた。


皿洗いで構わないから雇ってほしい。


痩せた、優しそうなまだ20代前半か、10代後半にも見える。
(こちらの履歴書には、写真の添付も生年月日、年齢も必要ない)。

告知もしていないのに、
一ヶ月のうちに履歴書を持った人が何人も現れるけれど、
私や夫がいつも店にいるわけではないので、
とりあえずスタッフがそれをファイルにしまっておく。

私と夫が後で一応目を通すけれど、
たいてい私たちが人を雇うのは、誰かの紹介、というケースが多い。

それかたまたま、
私が店にいたときに履歴書を持って訪れる人。

実際に会って話すと、うちに来る人、というのはピンとくる。
それに「たまたま」店に来たときに私がいたという事実も、
ここに縁がある、と言う風に私は解釈している。

それがこの若い男性のときには、
私と夫、二人がちょうどテイクアウトの店内で話しをしていた時だった。

二人で履歴書を見ながら言った。

「あなた、あそこのレストラン(近所にある)、つい最近辞めてるね」

彼はとても恥ずかしそうに言った。

「何回か遅刻したんです。
それでクビになりました。
でもそれ以外はちゃんと働いていたので、
もし必要だったらそのレストランのオーナーに電話してもらっても構いません」

夫は面白そうに彼を眺めて言う。

「遅刻はメジャ-な問題だね、
でも、そういう経験をした後の君は、もう新しい君なんだろう?
そんな前のことは僕らも忘れるから、
この土曜日に仕事においで。」

そんな簡単なやりとりで、ラッキーにも彼は仕事を得るチャンスを得た。

それなのに、

彼は当日、10分も遅れてやってきた。

「5時15分、っていう約束だったっけ?」

あまりの展開に夫は自分のほうを疑って彼にたずねた。

「いいえ、5時です。すみません、遅れました。」

「そうか。
次に仕事をもらったら、初日くらい絶対遅刻するんじゃないよ、
もう帰っていいよ。」


これまでの経験で、
私たちは「人は変わる(成長する)」ということを学んだ。
でも、それにはとても時間がかかることもあるし、
変わらないからといって、誰も、誰かを責めたりできない。

いつだってコントロールできるのは、
それに対して自分自身がどう反応して、どう行動するかだけだ。

それでも、いつでも新しい可能性を
試してみる、
今日は昨日の続きではないよ、
と物事を、人を、
生まれたての視点で見ていくことを
経験値と同時に持ち合わせて仕事をしていけるのは、
とてもわくわくすることだと思う。
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by S_Nalco | 2012-09-17 05:32 | 成長

山火事

私の住む町の名前は
この地域にもともといたネイティブ・アメリカンの言葉で、
「山に囲まれた谷」
という意味らしい。

日本の、
瀬戸内海の緩やかな山並みにも似て、
見渡していると
自分の小さい頃を思い出す。

けれど、ここは夏の間は「決して」、
というくらい雨が降らないせいで、
毎年山火事があちこちで発生している。
もちろんこの近辺だけでなく、
山並みが続く、お隣のカウンティの火事の煙が
こちらまで届くということもあって、
夏にはつきものの、山火事。


先週も山から煙が上がっているのが見渡せた。
買い物の帰りに、
もくもくと続く煙と、
消火の為、行き交うヘリコプターの音を聞きながら、
自分の日常のすぐそばにある、
非日常を思った。
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こんな様々な非日常が、
世界中で起こっていることを思い出すと、
当たり前の普段の暮らしが
当たり前でなくなる。
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かなり前になるけれど、
家族で山の中で暮らしていた時に
山火事で避難のために山を降りなければならないことがあった。

私は当時住んでいた山と、
山の暮らしが大好きだったので、
山火事のあと、変わりきってしまった山の様子にずい分泣いた。

真っ黒な大地、
足が埋まってしまうくらいの灰の森、
倒れて煙を吐く木々。

それでも私たちが住んでいた山小屋は焼け残り、
やはり焼けてなかったソーラーパネルのお陰で、
山に戻ってきたその日の夜も、
明かりを灯して、
家族で食卓を囲むことができた。

非日常の山火事のあとの、
真っ黒な大地の中に
ぽつんとある、
山小屋の中の
それは小さな、小さな日常だったと、
今ならそう振り返られる。

どんなことが起こっても、
淡々と、暮らしていくことが
この自然界なのだと、
毎夜、見上げていた星空を鮮やかに思い出す。

その時の火事は、
山の尾根をどこまでも南下して、
1ヶ月以上も続いた。
だから、その年にこの辺りで収穫された葡萄で作ったワインは
心なし、煙の香りがする。

私は一口飲んで、好きではないと思った。
でも、歴史を語るそのワインを好む人は多くて、
今も誰かのワイン貯蔵庫に眠っているかもしれない。
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by S_Nalco | 2012-09-12 01:13 | 日記

3つの質問

店ではスタッフと定期的にミーティングをするけれど、
辞めていく人とのミーティングも また、大切にしている。
そういう立場にある人たちは、
もちろん人にもよるけれど、
率直で全体的な意見を
聞かせてくれることが多く、
店でのやり方を見直すいい機会にもなる。

最近では、
第2子を出産するために、妊娠2ヶ月まで働いてくれた
20代後半の女性、Cさん。
うちのごはんが大好きで、
辞めてからも
しょっちゅうテイクアウト店のほうへ
お昼を買いに来ては顔を見せてくれる。

彼女は3年半、ダイニングスタッフとしてうちにいた。
トレーニングの期間には普通よりも長くを費やしたけれど、
その後は週末の夜のゴールデン・シフトを
二日とも任せることのできるくらいになった。

ところで彼女の仲の良い友人が
彼女が入る前にうちで働いていたことがあった。
その人がCさんがうちで働き始めたときにアドバイスしたことがあったという。

「Nalcoのところで働くなら、
絶対に言い訳をしてはだめよ」


自己主張だか何だか知らないけれど、
こちらでは、言い訳をすることに何も抵抗がない人が多い。

自分のミスを正当化するために
時間を掛けて
言葉を繋げる。

たいていのことは
「ここはアメリカ」と、自分に言い聞かせてスルーするけれど、
「言い訳」だけは、
こちらの時間を使って、
聞く必要のないことを聞いているわけだから、
うんざりする。

そしてたいてい言い訳の最後は、
「いつもはちゃんとやってるのよ」
で締めくくられる。

どうして
「次からは気をつけます」

ってシンプルに言えないのかな?
そのほうが、人生はずっとうまくいくのに。

夫は私に輪をかけて、
言い訳を聞くのが嫌いだから、
いつもは温和でも
このときだけは、
「言い訳は聞きたくない」
とにべもない。

そんなだから、Cさんの友人が彼女にまず第一に
アドバイスしたのだった。

「初めはちょっと戸惑ったんだけど、
Nalcoたちのやり方を見ていて、
言い訳をしない、ということを意識するようになったら、
言い訳をしないことが、
相手へのリスペクトを表すことに繋がるんだ、って
理解できるようになったの。」

私が彼女から話しを聞きたいと思ったのは、
彼女が素直で、
相手の立場になって 物事を深く掘り下げて
考え、感じることのできる性質があるからで、
要するにとても思慮深い。


さて、私はその頃、
ジェームス・スキナーの
「成功の9ステップ」(幻冬舎文庫)
という本を読んでいて、
その中にあった、
効果的なフィードバックが得られるという
「続けること、やめること、始めること」への、
3つの質問を
使わせてもらった。

「この職場で現在行っていることで、
やり続けて欲しいことは何か」

「今、この職場でしていることで、
是非ともやめてほしいことは何か」

「この職場でしていないことで、
やり始めてほしいことは何か」

Cさんはこの質問に、
ほんの少しだけ考えたあとは、
すらすらと答えてくれた。

その答えが
私たちの店で「何」が大事か、
に焦点を当てた、
的を得たものだったから、
私は彼女の提示してくれた、
私たちへの課題を考えるよりも先に
彼女の、
うちで働いていた3年半が、
彼女の中できちんと整理され、
昇華されていることに
とても感心してしまった。

美しくて、
いつも上品なおしゃれをして
店に現れていたCさんは癒し系タイプ。
でも、こんなはっきりとした提言を
最後に彼女から引き出ことができたのは、
この3つの質問のお陰かな、と思っている。
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by S_Nalco | 2012-09-02 15:53 |