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かりふぉるにあん・すし

今でこそスシは大人気で、日本人だけでなく、
韓国人や中国人のスシレストランオーナーが増えている。
大きな町に行けば各ブロックごとにスシ屋が見つかる。
私の住む小さな町でさえ、
うちの他に4軒のレストランがスシを出しているし、
大手スーパーマーケットには、
サンドイッチのデリの横でおスシを巻いている人がいる。

けれど、40年近く前にスシ屋をアメリカでオープンした、
というパイオニアの女将さんから話を聞く機会があったけれど、それは私のトラウマストーリーに果敢に立ち向かうものだった。
「はじめはかっぱ巻きから食べてもらったのよ、
生魚は気持ち悪がられてたから、まず鉄火巻きをただで配ってね。
生魚と、当時はまだ珍しかった醤油の味を知ってもらったの・・・、そんな頃のことよ」。
 
うちの店は
カリフォルニア・クージン・ジャパニーズレストラン。
カリフォルニア風にアレンジを加えた日本食、
ようするに、「なんちゃって」日本食なのです。
味噌汁は昆布だけでダシを取ってるし、うどんだしもそう。
ステーキやチキンにポテトのついたディナープレート、
揚げ豆腐にはコリアンバーベキュウソースがかかっている。
そして、ベジタリアンの巻きスシのバラエティ。
 
日本ではベジタリアンのおスシなんてスシじゃない、
なんて叱られそうだ。
アボカド、マンゴー、クリームチーズ、ガーリック。
マンゴーソースやバジルソースなど 
アメリカ人の大好きなソースで 味と色合いにアクセントを出す。

スパイシー・ツナにクリームチーズ、うなぎ、の組み合わせのように、
中身だけ聞くと、なんだか子供がクリエイトした手巻きスシのようだけど、
「やってみたら美味しい」
発見が実はいっぱいあって、おもしろい。
店のスタッフはとくにおスシに対してこだわりがない分、発想が自由。

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 それでもだんだんと鰹節のうどん出しをチョイスに加えてみたり、
お客様の反応を見ながら、日本の味を小出しにしている。
それは日本の本当の味を 求めて来て下さる人がいるから。
そういう人には、はまちのカマのグリル、ウニ、をお勧めする。
シメサバは随分色んな人に楽しんで貰えるようになった。

 「日本食、大好き!」
というアメリカ人は多いけれど、
私にとっての日本食は ひじきや切干大根の煮つけ、
五目煮、瀬戸内海で取れるような魚の炊いたもの、小いわしの刺身・・・。
でもアメリカ人はスシ、スキヤキ、天ぷら、といった
いわゆるハレの日の食事が日本食であるようです。

先日も妊娠したばかりの常連のお客さんが 
「週にどのくらいマグロの刺身を食べても大丈夫かしら、日本ではどう?」
と聞いてきた。
日本人ってそんなに頻繁に マグロのお刺身を食べたっけ?
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# by S_Nalco | 2010-07-03 17:20 | メニューの周辺

ラウンジの計画


2010年、春。

私たちはレストランとテイクアウト店の間にあったブティックに移転してもらい、そこをラウンジにする計画を立てた。
もともとレストランともとブティックのあった店舗は中で繋がっていたので、今回壁の一部を壊して 再び行き来できるようにするのは 構造上でも、手続き上でも簡単だということがわかった。

うなぎの寝床のような細長いレストランは、入口がすぐに混雑して、お客様に待って頂こうにも場所がない。それでラウンジがあれば、お酒でも飲みながらテーブルを待ってもらうことができる。
また、この近辺は葡萄の産地だけあって、カリフォルニアワインのテイスティングルームには事欠かないけれど、酒テイスティングをするのは日本人の私たちの役割かな、という気持ちがどこかにあった。

アルコールを主とした場所がひとつ増えるのは 果たしてこの小さな町の為になるのかどうか。
けれど、ここには夜、静かにお喋りしながらワインやお酒を楽しめる場所がない。若者が集うスポーツバーやダンスバー、カラオケはあっても。
大きな町に行くと、ゆったりしたカウチを置いた落ち着けるラウンジがある。アルコールに酔い大騒ぎするためでない、落ち着いたコミュニティの集える場所になり得るような店作りをしていきたいと思った。

これまで使っていたカーペットを取ると、黒とバーガンディのチェックの床が出てきた。
この柄に合わせて色を決めていく。はっきりとしたオレンジに茶色をアクセントにした壁、黒いマーブルがトップのカウンター席。
入口にソファを二つ置き、あとはコーヒーテーブルに椅子。店の奥に大きめのテーブルを置くのは、レストランに急なパーティが入ったときに使えるようにと、もとからのアイデア。
初めてレストランを開くときには、様々なこだわりと意気込みから、細かいところまで「これでなきゃ」というものがあって そのことでエネルギーを使ったけれど、今は大まかな色と配置、あとは効率的な予算の使い方に的を絞ることができるようになったのが楽。
何にこだわって、何を譲れるのか、何が優先か、そういうことが頭の中で自然に整理されてきている。

ブティックだったので、ショウケースや、棚、フィッティングルームなどが店内に取り残された。壊すのがもったいないので、どうする?、これを生かして店づくりする?、などと迷った。エコ精神が旺盛なのだ。けれど、思い切って、ぜんぶゼロにした。
レストラン、テイクアウト店同様、小さなスペースだけど、こじんまりしたあったかい雰囲気の店になりそう。すでに私のイメージの中では お客さまがくつろいでいる。
考えるだけで嬉しくて、がらんとした、作業中でまだ埃っぽい、未来のラウンジでしばし目を閉じる。

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# by S_Nalco | 2010-06-12 14:19 | ラウンジ

予感 3


 クリスマス近くにはこんなこともあった。

 山のたった一軒のおとなりさんはカップルで、二人そろってミュージシャン。ある集まりに 歌いに行くと言うので 夫もそれを手伝いにお供した。おもに彼らの二人の小さな子供の世話だったが、その小さなコンサートが終わると、歌に感動した老夫婦が ぜひクリスマスのプレゼントをさせて欲しいと申し出て来た。

 事実そうなのだけれど、ミュージシャンのカップルも、もちろん夫もお金を持っているようには見えなかっただろう(笑)。
老夫婦は彼らをショッピングセンターに連れて行き、親切にもそこで「何でも欲しいものを買ってくれ」と言った。

 思いがけないプレゼントにでも、夫は欲しいものを見つけられず、そういえばうちの便座が傷んでいたと思いだし、子供たちの大好きなガーフィールドの絵のついた便座を選んだ。老夫婦は笑い出し、子供たちにとキャンディやチョコレート、他にも色々と持たせてくれた。

 その話は、私のお気に入りのクリスマスプレゼントとなった。優しい笑顔に満ちたその老夫婦を思うだけで、心が温かくなった。そして、きっと彼らも 夫が持ち帰ったプレゼントに驚いている私たち家族を想像して、今もまだ笑顔でいてくれるだろうと思った。

 世の中には与える者と受け取る者がいて、その関係性の中、幸せは循環する。その中では誰もが幸せだ。もちろん与えるものは お金やモノとは限らない。
 いつか私も、与える側になれるだろうか、この老夫婦のように。
 
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# by S_Nalco | 2010-06-02 16:03 | 予感