「ほっ」と。キャンペーン

3つの質問

店ではスタッフと定期的にミーティングをするけれど、
辞めていく人とのミーティングも また、大切にしている。
そういう立場にある人たちは、
もちろん人にもよるけれど、
率直で全体的な意見を
聞かせてくれることが多く、
店でのやり方を見直すいい機会にもなる。

最近では、
第2子を出産するために、妊娠2ヶ月まで働いてくれた
20代後半の女性、Cさん。
うちのごはんが大好きで、
辞めてからも
しょっちゅうテイクアウト店のほうへ
お昼を買いに来ては顔を見せてくれる。

彼女は3年半、ダイニングスタッフとしてうちにいた。
トレーニングの期間には普通よりも長くを費やしたけれど、
その後は週末の夜のゴールデン・シフトを
二日とも任せることのできるくらいになった。

ところで彼女の仲の良い友人が
彼女が入る前にうちで働いていたことがあった。
その人がCさんがうちで働き始めたときにアドバイスしたことがあったという。

「Nalcoのところで働くなら、
絶対に言い訳をしてはだめよ」


自己主張だか何だか知らないけれど、
こちらでは、言い訳をすることに何も抵抗がない人が多い。

自分のミスを正当化するために
時間を掛けて
言葉を繋げる。

たいていのことは
「ここはアメリカ」と、自分に言い聞かせてスルーするけれど、
「言い訳」だけは、
こちらの時間を使って、
聞く必要のないことを聞いているわけだから、
うんざりする。

そしてたいてい言い訳の最後は、
「いつもはちゃんとやってるのよ」
で締めくくられる。

どうして
「次からは気をつけます」

ってシンプルに言えないのかな?
そのほうが、人生はずっとうまくいくのに。

夫は私に輪をかけて、
言い訳を聞くのが嫌いだから、
いつもは温和でも
このときだけは、
「言い訳は聞きたくない」
とにべもない。

そんなだから、Cさんの友人が彼女にまず第一に
アドバイスしたのだった。

「初めはちょっと戸惑ったんだけど、
Nalcoたちのやり方を見ていて、
言い訳をしない、ということを意識するようになったら、
言い訳をしないことが、
相手へのリスペクトを表すことに繋がるんだ、って
理解できるようになったの。」

私が彼女から話しを聞きたいと思ったのは、
彼女が素直で、
相手の立場になって 物事を深く掘り下げて
考え、感じることのできる性質があるからで、
要するにとても思慮深い。


さて、私はその頃、
ジェームス・スキナーの
「成功の9ステップ」(幻冬舎文庫)
という本を読んでいて、
その中にあった、
効果的なフィードバックが得られるという
「続けること、やめること、始めること」への、
3つの質問を
使わせてもらった。

「この職場で現在行っていることで、
やり続けて欲しいことは何か」

「今、この職場でしていることで、
是非ともやめてほしいことは何か」

「この職場でしていないことで、
やり始めてほしいことは何か」

Cさんはこの質問に、
ほんの少しだけ考えたあとは、
すらすらと答えてくれた。

その答えが
私たちの店で「何」が大事か、
に焦点を当てた、
的を得たものだったから、
私は彼女の提示してくれた、
私たちへの課題を考えるよりも先に
彼女の、
うちで働いていた3年半が、
彼女の中できちんと整理され、
昇華されていることに
とても感心してしまった。

美しくて、
いつも上品なおしゃれをして
店に現れていたCさんは癒し系タイプ。
でも、こんなはっきりとした提言を
最後に彼女から引き出ことができたのは、
この3つの質問のお陰かな、と思っている。
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# by S_Nalco | 2012-09-02 15:53 |

土鍋

この冬に土鍋の蓋を割ってしまった。

家族5人にはぴったりの大きめの土鍋で
とても気に入っていたのでがっかりだった。

サンフランシスコまでまた買いに出かけても、
気に入ったサイズや柄があるのか疑わしく
新調するのもおっくうな気分だった。

それが
春に友人が日本へ帰るというので、
それまで彼らが使っていた土鍋を夫が貰って来た。

二人暮らしの友人の土鍋は
これまでよりフタマワリも小さくて、
私はもらった箱のまま戸棚の奥にしまっていた。

***

今年の夏は
まとまった休暇はなしで、
とにかく仕事をしようと決めていた。


やりたいことが山積みで、
去年の夏に
夫とこれからの5ヵ年計画を立ててからは
なおさら先に進みたい気持ちばかりがはやる。

5年のうちにやっておくこと、
5年後のピクチャーがあれば、
毎日はけっこう動的になる。
というわけでブログも長いあいだ更新していませんでした。
(何度も来て頂いた方、本当にありがとうございます)


でも、そればかりじゃなく、

2年前に長女が家を出て、
この初夏には息子も家を出た。
そしてついに末娘が一人っ子と、めでたくなって、
我が家は3人家族になってしまった。

末娘はこの8月から高校生になり、
だから
私はこれでもっともっと仕事ができるわ!と言ったら、
夫は
「そうは言っても、まだ彼女は子供だよ」
と 私をけん制する。



ある、急に涼しくなった夏の夕方に、

しまっておいた土鍋を出して、
義母から教わった料理の中で一番好きな、
「ごぼう鍋」を作った。

こんな小さな土鍋、
と思っていたのに、
それは3人には十分で、
翌日の分まであった。



日本に住む84歳の父は
肺炎で入院した。
退院後、電話をしたら、

「100歳まで生きるから大丈夫、
そうしたら、お前はまだ50年以上もあるな、
そりゃ、すごい。
頑張れよ!」
と励まされた。

そうか、
あと50年か、

その間、
何度、土鍋を
自分の生活にあわせて変えることになるんだろうな
とふと思った。
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# by S_Nalco | 2012-08-28 14:34 | 日記

オフィスの移転

ホーム・オフィスを
テイクアウト店の奥にあるスペースに移した。

店のほうに十分なスペースがあるにも関わらず、
今まで家の一部をオフィスにして
仕事をしていた。

時間的にフレキシブルで
仕事をしながら、
家事、洗濯が出来て、
子供たちと一緒にいられること。

ホーム・オフィスは働く主婦にとっては、
これ以上ない魅力的な仕事場だった。

思い返せば、おむつでパンパンだった私の大きなバッグの中身が、
(私は末娘のときには殆ど紙おむつを使わなかったので)
いつしか店に関することの書類にとってかわって、
その中には子供達の学校からのお知らせや、
お稽古事の道具なども混ざって
まさしく公私混同。

ホーム・オフィスのファイル・ケースの中では
銀行ステイトメントの後には、
子供達の成績表をしまうファイルが並んでいた。

それが先日、
思い立ってすべてを店に移した、

ら、

私の生活に身軽さが蘇ってきた。

店から離れて
家に帰っても、
視覚のうちにはいつも
机に積まれた仕事が目に入っていて、
私の日常には
仕事から100%離れる、
ということがなかったことに
オフィスを移した後で、初めて気づく。


丁度、
授乳をやめたとき、
身体がすっかり楽になって、

自分の本来の身軽さに
びっくりしたような・・・

そんなことを思い出した。


机や、ファイルケース、コピー・マシーン、
資料の積まれた本棚、シュレッダー・・・
そんなものがなくなって、
すっきりとしたダイニング・ルームの一角に、
赤いソファだけがポツンと残った。

そしていつしか大型テレビが陣取って、
いつも誰かがそこで寛いでいる。

家に帰っても、
これまでのように仕事をすることがなくなった今、
家事を済ませた後は、
なんとなく、
娘の部屋のベッドでごろごろしていたら、
仕事から帰ってきた夫が、
顔をほころばせる。

「ママは家にいても、
家事か仕事のどっちかだよね」
と子供が言うのを
大げさだなあと思っていたけど、

今思えば、こんなのんびりしたフィーリングの中で、
幼かった子供達と 
もっと過ごせれば良かったのに、と
ちょっぴり切ない。
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店をオープンした頃まで住んでいた家を
先日、用事があって訪ねた。
洗濯物を干していた、懐かしい庭で遊ぶ娘。
でも、今は便利な町中の生活が気に入ってます。
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# by S_Nalco | 2012-05-07 14:35 | 日記

色々な色

ある日、
私のお気に入りの
ダイニングスタッフが
嬉しそうに報告してきた。

「このあいだのディナータイムのときにね、
 とっても素晴らしいお褒めの言葉を
 お客様からもらったのよ」

「どんな?」

「あなたはまるで、ホワイト・バージョンのNalcoね、って!」

ホワイト・バージョン!

他国民族で構成しているアメリカでこその、こんな表現。
でも、「そんなこと言っていいの?」
って感じだけど、
イエロー・バージョンの私はこれを聞いて、
大笑いした。

お客さんで、
ラスト・ネームがホワイトさんと言う人がいて、
娘と町を歩いているときに、
その家族に会った。

「あら、ホワイト・ファミリーがお揃いで!」
と声を掛けると、
娘がぎょっとしたように私を見たけれど、
あとで、名前が「ホワイト」だと知るとほっとしていた。
(娘よ、私がそんな失礼なことを言うとでも?)

宗教と政治、野球の話はタブーと言われる。

先日もお店で仲良くなったお客さんの家へ呼ばれて
一緒に晩御飯をご馳走になったけれど、
ユダヤ人の彼らと、
話が多岐に及んでくると、
民族性、宗教、は相手をより深く理解するのに役立つから
そんな話にもなる。

そんな時、いつも思い出すのは、
相手を100%理解することなんて不可能だということ。
それをわかったうえで、
相手を果てしなく、
理解しようとする姿勢だけが、
常に希望なのだということ。

その姿勢があるから、
尊敬や、謙虚さが生まれる関係が出来るのだと思う。

たとえ同じ、イエローでも、
二つとして同じ色はないのだろうから。
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(庭で咲いた色とりどりのチューリップ、
 店に飾って、スタッフや沢山のお客さんに喜んでもらいました)
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# by S_Nalco | 2012-04-23 07:42 | 日記

集い。

店の建物を購入するときに、お世話になった
“Goen”グループの人たちを招いて、
恒例である年に一度のパーティを1月終わりに催した。

店を開いてまだ3年目だった私たちに
心よく建物の頭金を融資してくれた10組の人たち。

旅行や仕事などで都合がつかない人も何組かいたけれど、
今年で6回目になるこのパーティを無事終えるとほっとする。

毎年、パーティには色々に趣向を凝らすけれど
今年はシーズンでもあるから、
皆んなでカニを食べることにした。

「テーブルに新聞紙を敷いてカニをならべて、
みんなでひたすら食べるんだよ、楽しいよ。」

そう提案した人がいた。
でも、そんなパーティ、したことがない。
そもそもそんな簡単なパーティでいいの?

ディップするソースは日本ではお馴染みの、
ポン酢、
カニ味噌のソース、
アメリカンスタイルでは
レモンとホースラディッシュ(西洋わさび)、
レモン&タラゴンの4種類。

今回は友達の
カリフォルニア料理を専門にするシェフが差し入れしてくれた
前菜、
ラズベリー・ドレッシングで仕上げた
ほうれん草とアーモンド、ゴート・チーズのサラダ、
カニのスープ、

それからカニをメインにしたおスシ。

それらを平らげた後でいよいよカニがテーブルに並ぶ。

これが本当に楽しかった。

その日の朝に採ってきたばかりのカニを皆んなで手を使って
食べる、
食べる、
食べる。
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カニにまつわる思い出なんかを話しながら、

なんとなく日本で皆んなで鍋をつつきあうような、
気楽さとか、
連帯感。

一月にはカニとワインのコラボ・メニューがあちこちであるけれど、
たいてい合わせてあるのは
Sparkling Wine
Sauvignon Blanc
Pinot Gris

うちでは カニにはPinot Gris が一番人気。
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            (Pinot Gris)

さんざんにカニを味わい尽くしたあとは、
新しくメニューに入る予定の、
3種類のタルトをお試しサイズにスライスしたデザートと、
お土産に貰った地元のポートワインで〆。
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(さすがに新聞紙ではなく、使い捨てのテーブルクロス。遠慮なく食べ散らかせます)。

ところでこのGeoenグループが発足してから間もなく、
一組のカップルがリタイアして、オレゴン州へ引っ越していた。
だからこれまでのパーティには来れなくて、
毎回手紙だけのやり取り。

彼らは以前、夫婦でレストランをやっていたので10組の中でも
率先して、私たちを「応援しましょう!」と言ってくれたカップル。

先週の土曜日、何年かぶりに店を訪ねて来てくれた。

普段は娘夫婦の近くに住み、孫の成長を見守り、
年に一度、数ヶ月、
今度は南カリフォルニアの、
末娘の家の近くにある
自分たちのアパートメントでそちらの孫と過ごすのだそう。

70歳のお祝いに、
この5月にはふたりでイギリスに行くのだと言う。

温かな笑顔はそのままでも、
ますますおおらかなふたりのオーラに

私の心はすっかりゆるんでしまった。

色んなことを話した。

彼らの孫のこと、
お互いの子供達のこと、
家族について、
仕事について、
夫婦について・・・。

今年のGoen Partyは、
彼らとの再会というおまけがあって、
嬉しかった。

家族と過ごせることの幸運、
普段は気づかない、
身近にある幸せの奇跡。

愛する人、
大好きな人たちと
囲むテーブル、
集い。

そんな機会の
ひとつひとつを
これからも大切にしていこうと思う、
温かな余韻が
いつまでも心に残る再会だった。
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# by S_Nalco | 2012-03-13 04:04 | 集い