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信頼

娘を中学校へ送って行った帰り、
ストップ・サインで
スクールバスが曲がってくるところに出くわした。

ハンドルを切りにくそうだったので、
私はぎりぎりまで路肩に寄った。

運転手が私に向かって、にっこり笑う。

なんと白髪の痩せた婦人。
この辺りでは スクール・バスの運転手は殆どが女性でも、
たいていは男にも負けないような大柄な人が多い。

黄色いスクールバスと、黄色いジャケットを着た、
女性運転手を見るたびに思い出すのは、

10年前に私たち家族が意図的に3週間だけ、
ホームレスをしていた時のこと。

夏休みまでの3週間、
小学校4年生だった長女を学校に行かせるために
町外れの山のふもとのキャンプ場で暮らしていた。

事情を話すと学校側は、

「生徒のいるところなら、どこでも行くわよ!」

と毎朝キャンプ場まで娘のためにスクールバスを寄こし、
帰りも連れて帰って来てくれた。

毎朝7時、まだ霧のかかるもやの中を
娘をキャンプ場の入り口まで送って行った。
スクールバスの運転手は
ダイアナ、という名前の豪快な女性だった。

あの3週間は、私のこれまでの人生の中でも
特別なシーンとして残っている。

テントを張った、ままごとのような生活。
大きなバケツにお湯をはって、
3歳と、5歳の末娘と長男のお風呂にした。
週末にはオフ・ロード・バイクを楽しむ人たちで
一杯になるキャンプ場も、平日は静かで、
子供達の大きな庭だった。

私達の持ち物はとても少なくて、
借金はゼロでも、
お金のもちあわせもちょっとだった。

それでも、
その身軽さが
私の精神も、身体もとても軽くしてくれて、
そんな状況の中にでも
家族5人が笑って暮らせる、
人生のフレキシビリティを味わっていた。

どんな状態になっても、
何とかなる。

選択技も与えられないままに、
私のほうが人生に歩み寄るしかない状況もあれば、
人生のほうが、私に歩み寄ってくれる時もある。

そんな人生への信頼感を豊かに育んでいた時期が
あの頃だったと。
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# by S_Nalco | 2012-01-28 14:33 | スピリチュアル&マテリアル

観察日記

今年に入ってダイニング・スタッフとの個人ミーティングが
順調に進んでいたのは前回も書いたとおり。

ところが今週に入ってから急遽セットアップした、
若いアルバイトとのミーティングは散々だった。

その、Kさんとの話が終わったあとで、
店のオフィスに行くと、
ペーパーワークをしていた女性スタッフが私に声をかけた。

「Hi, Nalco! 元気!?」

いつものように、たいてのことは横に置いておいて
「もちろん元気よ!」と言う代わりに、

「実はすごいひどい気分よ」

と言うしかなかったほど。

怒りは体内を酸化させるらしいから、
感情的にだけでなく、健康にも良くない、
というのは実際に怒ってみるとよくわかる。

Kさんとのミーティングは去年から何度もやっていて、
毎回、同じテーマを違う角度から話したり、説明したりしてきた。
でも、ついに今回は、
何度も同じことを言わせるKさんを目の前にすると
不機嫌になる自分を抑えられなかった。

励まして、少しの進歩でも褒めて、
というやり方がたいていの人を伸ばすのに、
Kさんの場合は一進一退で進まない。

それよりも、感情を抑えられなかった、
自分への嫌悪だけがミィーテングの後に残った。


余程のことがない限り、うちでは
「相手が諦めないなら、うちも諦めない」
という変なオキテ(?)のせいで 
素直で、明るい性格のKさんを雇い続けている。
Kさんなりに一生懸命なのはわかっている。
その一生懸命の結果が私の思い通りでないだけだ。

うちでは20代前半の若いスタッフが5人ほどいるけれど、
その子たちを前にして、
いつもある私の視点は、
彼らの「親」が喜ぶようなボスでいよう、ということ。

彼らにとってはお給料が一番大事でも、
彼らの親にしてみれば子供のために、もっと大事なことがある。

それを私はいつも見ている。

私にも20代の長女を含め、3人の子供がいる。
長女がアルバイトした先の何人かのオーナー。
反面教師もいたし、
私が実際に行って、御礼を言いたくなるような、
娘のことを思った的確なアドバイスをしてくれた人もいた。

実際にその若いスタッフより、
背後に見える彼らの親のことを考えると、
ことさら彼らを大事に思う。

今、「ここ」、が彼らの長い人生の中では初期の成長過程で、
私はその「時」を共有させてもらっているだけ。

彼らの計り知れないこの先の可能性を思えば、
光栄なことだとさえ思う。

若い人が精神的に成長していくのは、
夏休みのひまわりの観察日記のように
そこにはお約束の「実り」が必ずついてくる。
ただひと夏で結果がでるわけではない。
そのかわり、見たこともないような大輪になることもある。

その観察日記が楽しいから、
夫が言い出した、あんな変なオキテも健在なのだ。

Kさんの観察日記には、

その日は
嵐だった、
と書いておこう。

ひまわりは、それでも上を向いているようです。
がんばれ。
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# by S_Nalco | 2012-01-22 18:07 | 日記

楽しさへの追求

今年の1月1日に、地元紙ではなく、
わりと大きめな新聞にお店を紹介してもらったお陰で、
ホリデーシーズンが終わった今も毎日レストランが忙しい。

スタッフが時々使う、
間違ったり、出来なかったときの言い訳のトップに、
「忙しかったから」
というのがあるけれど、
その言葉を聞くたびに私はいつも正してきた。

「店は忙しくなくちゃいけないの。
 忙しさを 
 対応できなかったことへの
 自分の言い訳にしてはいけないよ」


だからこそ皆んなが助け合える、チームワークが重要になってくる。

先週、こんなことがあった。

ランチタイムの混雑したさなかに
ひとりのウエイトレスが私に言うのだ。

「Nalco,
枝豆をひとり分、お湯で洗って流してきてくれないかな?」

枝豆は普通、朝に茹でたぶんを大きなコンテナーに入れておいて、
それをオーダーが入ればひとり分ずつすぐに出せるようにしてある。

「一番のテーブルのお客さん、
減塩しているの。
枝豆が食べたいらしいから、
お湯で塩を抜いて出したらいいかな、と思って」、
とそのスタッフが説明したのを聞いて、
私は思わず笑い出した。

なんて、可愛いことを言うんだろう。
そして、お客様のために
彼女が自分なりに考えてみたことに、
私の心がほころんだ。

うちでは基本的にはお客様のダイエットには
忠実にお応えするのがモットーで、
だから、
ベジタリアンや、卵なしのビガンのメニューのページの他、
特別にウィート・フリー(小麦を使わない)メニューもある。
だからそれらに対応したドレッシングや、塩を使っていないソース、
デザートも用意してある。

「枝豆はね、塩茹でしているからすでに塩味がついてるの。
お湯で洗っただけでは抜けないし、美味しくなくなるよ。」

私は彼女が一生懸命考え出した作戦に水を差した。

もちろんキッチンにひとり分、茹でてもらうことは頼めるけれど、
こんな忙しいときにそこまで頼むのは気がひける。

こんなときには、ダイニングのスタッフが
お客様のオーダーを誘導していくのが大切になってくる。

そもそも枝豆は近所のスーパーマーケットでも
いつでも冷凍で売っているくらい、
アメリカでもポピュラーで、
うちでなければ食べられない、
というものではない。

それに、
時間がかからずに、すぐに出せるおつまみは枝豆でなくても
他にも沢山のチョイスがある。
それらはドレッシングやソースが別になっているので、
塩なし、というのは可能だ。

どんな時、何を、お客様にお勧めするのか、
お客様のリクエストをそのまま鵜呑みにして
やり慣れないことをするよりも、
それに変わる何か、提供出来るものを伝えたほうが、
こちらとしてもリスクが少ないし、
お客様にもより早く、美味しいものを食べて頂ける。

ダイニング・スタッフの仕事は
ただお客様のオーダーを取ってくるだけでなく、
キッチンと、お客様の橋渡しをすること。
特にうちのような小さな店で、
あらゆるお客さまのニーズに応えようとするなら。



そんな、以前にも増して忙しい日々が続く中にでも、
お客様から
「スタッフがとても楽しそうに働いている」、
と幾つものコメントがくると、
うちのスタッフも本当によくやるようになったなあ、
としみじみ思う。

忙しさが、
嬉々とした態度に変換されるようになってくると、
大したものだと思う。

こんなときだからこそ、
笑顔を忘れず、
お客様からは見えないダイニング・ステーションでは
「忙し~よ~
でも、こういうの大好き!」
とそれぞれがドリンクを作ったり、
デザートを盛り付けたり、
手をせっせと動かしている。

誰が始めたかしらないけれど、
最近では、忙しくなってくると、
皆んなが口ずさむ変なハナ歌がある。


私は今年になって、
7人のダイニングスタッフと
ひとりづつ時間を持って話をした。

細かい注意事項、日々やるべきことは
全部紙に書いてリストにしてある。
だから言うことはただひとつ、
いつでもリストをおろそかにせず、
それに沿って仕事をしてね、
ということだけ。

あとは
私がどんなにその人に感謝しているかを伝えて、
相手の心がオープンになった
楽しい雰囲気のなかで
お店のことについて話をする。
そうすると、本人が向かうべき方向、
気づきが、
自然に会話に上ってくる。
充実したミーティングになる。

仕事は楽しくなくちゃいけない。

その楽しさの中で
常にクオリティを高めていく自覚があれば、
私たちは、楽しさをクリエイトする、
という循環の中にいられるだろう。



今、一緒に働いてくれているスタッフに心から感謝している。

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# by S_Nalco | 2012-01-16 11:32 | ホスピタリティ

ダイエットしてみてわかったこと。

12月31日、いつものように朝、体重を計ると、
自分の理想のナンバーがそこに現れた。

何年ぶりだろう?
体重計にその数字が現れたのは?

思えば店を始めたころは、
休む暇もなく文字通り店で働きどおしで、
私は周囲から気の毒がられるほど痩せていた。

太りたい、
そう思っていたら、
8年後には望みどおり、
いや、望み以上に 太っていた(笑)。

「Nalco、平気よ、
ちっとも太ってないわよ!
自分の美しさに自信がなくなってきたらね、
ウオルマートに行けばいいのよ」

日用品全般が売ってあるその店のお客の
高いパーセントの人々が肥満傾向にあるのは、
私も薄々気づいていたから、
友人にそう言われたときには笑った。

でも、私にとって他人との比較ではなく、
実際、自分の身体の重さを日常生活で感じるのはきつい。

齢、45歳、
このまま諦めたら、
きっと私はこのままかなあ、
それどころかもっと太っていくに違いない。

そんな時に
私の大好きな美容家、
佐伯ちずさんが
40代半ばでダイエットをしていたことを知った。

それは
炭水化物を取らない、
9品目の入った食事、
(食事の半分が野菜)
週に一度の入浴法、
週に一度の体操、

から成る「和田式」といわれるダイエット法。

炭水化物を取らない、
すなわちごはんを食べない、

それはたいていの日本人にはびっくりするアイデアではないかと思う。
少なくとも私には。
ずいぶん前に、
ある芸能人が「体形維持のために米は食べない」、と聞いたとき、
芸能人の覚悟ってすごいなあ、と思ったものだった。

米力(こめぢから)、と言うではないか、
お米のおかげで自分の元気があると思って育ってきた。

それなのに、
私はご飯抜き、(パスタやうどん、パンも抜き)
毎回9品目の入った食事で、
4ヶ月で目標の体重に戻った。
8キロの減量。


しかも私の場合、
やったのは炭水化物を取らないこと、
9品目を食すること、
だけ。

タブーとされるアルコールは
普通に取っていたし、
外食をしたりすると、
炭水化物を多少は取ることもあった。
続けることが目標だったので、
あまり我慢しないように、
甘いものが欲しいときは適当に食べていたし、
9品目が足らないときは、
翌日にそれをたっぷり補給するとか、

考えてみれば私のダイエットのやり方というのは、
かなりいい加減。

実は最初の一ヶ月で4キロ近くすでに減量していたので、
このダイエットをきっちりやれば、
きっともっと痩せられると思う。

でも、ここで私が言いたいのは、
痩せた!
ということではなくて、
「お米を食べない生活」
というものが考えられないと、
思っていたにも関わらず、
そうと決めれば
割と苦労なくして
お米なしの生活にシフトしてしまえたという事実。

子供たちのためにお米は今も炊いているけれど、
私にとって
お米はすでに主食ではなくなってしまった。

アメリカに来てからも、
お米はずっと食べてきたし、
店を始めてからはなおさらのこと。

「お米のない生活なんて有り得ない」

そう信じてていたけれど、
実はそうでなかった、
という話。

よく考えてみれば、
お酒やコーヒーとは違って、
中毒性があるものではないので、
やめることは簡単なはずだった。

勝手な思い込みというものが、
気がつくと、自分を支配していることがある。

以前、山の中で自然暮らしを始めたときも、
そんなことに気づいて、
だからこそシンプルな暮らしができた。

体重だけでなく、
精神も、
そろそろダイエットの時期に来てるかな。
# by S_Nalco | 2012-01-08 08:37 | 気づき

明けましておめでとうございます。

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2年前に娘が20歳を迎えた時

サンフランシスコのダウンタウンで、
着物を借りて、
着付けをしてもらいました。

海外に住んでいて、
こんなに簡単に
満足な思いができるなんて。

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2012年、
たくさんの笑顔が咲きますように。
# by S_Nalco | 2012-01-04 12:45 | 日記